これだけは知っておきたいウクライナ平和サミットのポイント
スイス中部ビュルゲンシュトックで15~16日、ウクライナ平和サミットが開かれる。重要なポイントをまとめた。
公式な目標は?
スイス連邦外務省によれば、サミットの目的は「将来の和平プロセスを活気づけ、そうしたプロセスに向けた実践的要素と措置を作る」ことだ。参加国は、「ウクライナにおける公正で永続的な平和」のためのアイデアやビジョンを提供することになっている。
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当初は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の10項目の和平案を中心に話し合われる予定だった。しかし、現段階では同案は複数の点において実現性がなく、参加国のほとんどが支持できる食料安全保障(ウクライナからの農産物の輸出)、核の安全(特に原子力発電所)、捕虜・国外強制退去者の交換が議題の中心になるだろう。
開催に至った経緯は?
スイス東部ダボスでウクライナに関する第4回国家安全保障会議が開催された翌日の今年1月15日、ゼレンスキー大統領がベルンを公式訪問。そこでウクライナの和平方式について話し合われた。これを受け、スイスはハイレベル会合を開くと発表した。
こうして、技術的なプロセスが政治的なレベルに引き上げられた。当時、イスラエルとイスラム組織ハマス間の武力衝突の影響で国際的な関心が薄れる中、軍事的圧力が高まっていたウクライナにとっては願ってもないことだった。
スイスはこれまでもロシアとウクライナ間の協議の場を提供し仲介役を務めてきた。スイス南部ルガーノで2022年に開かれたウクライナ復興会議は、スイスの仲介役としての好例と見なされた。この復興に向けた同種の会議は後に他でも継続して行われ、ウクライナ復興に国際的な支援をもたらした。
ウクライナは何を望んでいるのか?
ゼレンスキー氏は昨年の時点で既に、できるだけ多くの国が参加するこうした会議の開催を提案していた。目的はロシアへの外交圧力を高めることにあった。ゼレンスキー氏が目指すのはウクライナ全領土(クリミア含む)からのロシア軍の撤退だ。軍事的な膠着状態や西側諸国の連帯の弱体化の中においても、この要求から一歩も引く様子はない。
ロシアの大規模侵攻からほぼ2年半が経過し、今も激しい戦争状態が続くが、どちらかが優勢になることは当面ないだろう。ウクライナにとって重要なのは、世界がこの戦争に注意を向け続けることにある。同国の国防が他国からの軍事・財政援助に依存しているためだ。
自国の和平案への支持を増やすことがウクライナの描く最善のシナリオだが、そのためには、できるだけ多くの国々がサミットに出席する必要がある。外交専門のウクライナの政治家イェリザヴェータ(リサ)・ヤスコ氏はswissinfo.chのインタビューで、ロシアとのちに協力できるプラットフォームとして、また最終的に戦争終結につなげられる国際的なパートナー連合の実現を望むと語った。
スイスは何を望むか?
ロシアの大規模な侵攻が始まって以来、スイスは何度も行動を起こすよう迫られてきた。まず、対ロシア制裁への追従を余儀なくされ、その後は西側諸国からウクライナへの武器再輸出を迫られたものの中立を理由に拒否した。
スイスの行ったロシア人オリガルヒ(新興財閥)の資産凍結が、あまりにも物足りなく映った国もあった。ただスイスは人道支援を行っており、人道的地雷除去を重点支援している(10月には地雷除去に関する会議を開催予定)。とはいえ、スイスの貢献度は比較的低いとの批判もある。
政府は自らを中立的な仲介役であり、(利害対立国の)対話の場にふさわしいと考えている。しかし、ロシアの侵攻後、中立は様々な場面で日和見主義とやゆされ信用を落とした。和平実現の道を見出す努力を尽くせば、スイスはこの批判に対し公に対抗できるだろう。また、国連安全保障理事会の非常任理事国であるが故に、さまざまな場で多国間主義の擁護者という立場を示す機会がある。
これまでと同様、このようなサミットは二国間協議の機会ももたらす。西側諸国はスイスが経済的・政治的に深く関わり、最も関心を寄せる国々だ。そうした西側諸国の代表団が今回の会議に出席する。
こうした会議の主催は、外交のソフトパワーにほかならない。ビュルゲンシュトックでスイスは信頼できるホスト国としての評判を高めることができる。
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誰が出席する?
スイスは160以上の国の代表団を招待しており、スイス外務省の発表によるとこのうち80カ国が参加表明した(ウクライナ側は100人以上の登録が確認されている)。最終的な参加者リストは会議直前に発表される予定で、その際にどの国がどの外交レベルによって代表されるかが明らかになる。
国家に加え、欧州連合(EU)、国連、欧州安全保障協力機構(OSCE)、欧州評議会、バチカン、コンスタンティノープル総主教庁も招待されている。参加が決まっている代表団の半分は欧州からだ。従って、西側陣営の代表者は多い。新興・途上国「グローバル・サウス」からできるだけ多くの国を参加させることが焦点の1つではあった。新興国グループ「BRICS」ではインドを除き、そのほかの主要国は距離を置いている。
出席しないのはどこ?
中国とブラジルがキャンセルした。ロシアが不参加ならこのような会議は意味をなさないというのが理由だ。他の国々、特にグローバル・サウスの国々も、同じ理由で参加しない、あるいは首脳級の出席はない。
というのも、中国、ブラジル、南アフリカ、トルコなど数カ国は独自の和平イニシアチブを立ち上げたか、あるいは提案しているからだ。実際、ウクライナとロシアの間で近年、囚人交換や黒海経由の穀物輸出などの交渉を促進した国もある。
多くの国はまた、この戦争を米国とロシアの対立と見なす。この観点で考えれば、自国の立ち位置の価値を高めるために外交的な策略を巡らすことは理にかなっている。
なぜロシアは来ないのか?
この会議が発表されたとき、ロシアは即時に、そして何度も不参加を公の場で明らかにした。国連安全保障理事会での議論の端々で、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はスイスのイグナツィオ・カシス外相に直接そう伝えたほどだ。スイス連邦内閣は、それでも招待状を送るべきかを議論したが、ロシア政府の明確な発表を受けた後での挑発行為と受け取られないよう、送付を見送った。
ロシアはここ数週間、この平和サミットを強く批判し、参加しないよう各国に圧力をかけてきた。ロシア政府は以前からスイスを中立国とは見なさず、「公然と敵対する国」としている。さらに、ロシアの要求はウクライナとは正反対だ。ウクライナは非武装中立化し、ロシアは憲法上、併合済みの領土(およびその先の一部)をロシア領と宣言する。一方ウクライナ側は、領土からのロシアの完全撤退を主張している。
スイスの政治家たちはこの会議をどう見ている?
外交サミットであるというその性質上、成功か失敗かは終了後に明らかになる。参加国が少なすぎるという批判的な声はスイス連邦議会だけでなく国外からも上がっている。
スイスをターゲットに数週間前から行われているロシアのプロパガンダには、スイス議会も神経を尖らせている。しかし、たとえ失敗する恐れがあっても、戦争時にはこのようなイニシアチブが必要だと強調する議員もいる。
平和サミットの出席者たちは、ウクライナの主張を可能な限り盛り込んだ最終文書が会議の最後に署名される可能性があると述べている。外交上、これは他の国やロシアも招待される次回会議に向けた一歩となるだろう。
編集:Marc Leutenegger、独語からの翻訳:宇田薫、校正:大野瑠衣子
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