米の鉄鋼・アルミ関税「エスカレートの可能性も」 スイス機械・金属連盟
ドナルド・トランプ米大統領は10日、米国が輸入する鉄鋼・アルミニウムに対し例外なく25%の関税を課すとする文書に署名した。スイスの対米輸出は多くはないが、欧州連合(EU)が報復措置に出れば深刻な影響をもたらしかねない。
スイスの産業界が貿易摩擦に巻き込まれるのは今回が初めてではない。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)はトランプ関税がスイス工業界に与える影響について、スイス機械・電気・金属産業連盟「スイスメム工業会(Swissmem)」のジャン・フィリップ・コール副会長に聞いた。
SRF:トランプ氏の追加関税を警戒しているか?
ジャン・フィリップ・コール:米国向け鉄鋼・アルミニウムに追加関税が課されることを非常に懸念している。米国向けの鉄鋼・アルミニウム輸出量は比較的少ないとはいえ、スイスにも影響を及ぼす。これがエスカレートし、突然、対象が拡大する可能性がある。
スイスのハイテク産業の対米輸出額は約100億フラン(約1兆7千億円)で、そのうち鉄鋼とアルミニウムが占める割合は約0.8%(約8000万フラン)だ。
EUへの輸出額は?
スイスは、約27億フラン相当の鉄鋼・アルミニウムをEUに輸出しており、対米よりもはるかに多い。もしEUが米国の新たな関税に対抗措置を講じ、スイスを再び第三国としてその対象に含めるならば、私たちは深刻な問題を抱えることになる。
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第1次トランプ政権時、スイスは苦い経験をした。
2018年に米国が鉄鋼とアルミニウムに対する輸入関税を導入した際、EUは中国からの鉄鋼製品の輸入が急増すること危惧し、対抗措置を取った。鉄鋼製品について関税割当枠(クオータ)を設け、それを超えると最大25%の関税を課すというセーフガード(緊急輸入制限)措置だ。
そこでスイスは第三国とみなされた。スイスは割り当てられた枠の中で輸出することはできた。しかし、関税も払わなければならなかった。実際には、私たちは他の国々と一緒の割当枠を与えられていた。割当枠は即座に埋まり、スイス企業は関税25%の壁にぶつかってしまったため、EUへの輸出ができなくなってしまった。
当時、スイスは業界への影響を軽減するためにどのような措置をとったのか?
スイス当局はスイスが第三国としてではなく、例えばノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインといった欧州経済領域(EEA)加盟国と同じように扱われるよう努力した。しかし、それはうまくいかなかった。EUは当時、聞く耳を持たなかった。
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同じようなことが繰り返されないよう願っている。スイスとEUは二国間協定の締結を間近に控えている。新しい協定が批准されるよう全力を尽くすと互いに確約したところだ。もしスイスが再びEUから第三国とみなされ、再び高い関税を支払わなければならなくなれば、これらは水の泡となる。
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それは逆効果だ。スイス国民の敏感さを知る人なら、新協定への反感が増幅するだけなのは目に見えている。それはEUの利益にはならない。
ドイツ語からの翻訳:大野瑠衣子、校正:ムートゥ朋子
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