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ケニアのがん治療が直面する医薬品アクセスの壁

27歳という若さで乳がんと診断されたルシア・ショカウ・ムリさん。がん宣告をどう受け止め、治療を受けるためにどのような問題に直面しているのか。ケニアのナイロビ南部のマクエニ郡に住むムリさんを訪ねた。

マクエニ郡病院にあるがん治療クリニックの外でムリさんに会った。何よりも大きな悩みは治療費だとムリさんは話す。経済的な負担が一番大きいのは、定期的投与が必要なトラスツズマブという高額ながん治療薬だ。生存率を劇的に向上させる実績のある薬で、スイスの製薬大手ロシュが「ハーセプチン」の商品名で販売する。

トラスツズマブは発売から20年以上が経つが、世界銀行の国際貧困ライン(1日約301円)以下で生活する人が45%も占めるケニアでは、依然として手が届かない高額な薬だ。標準投与数18回のうち1回分の費用だけでムリさんの月収の2倍以上もする。

このように高額な医療費に苦しむ患者は多い。また、医師にとってもこれは深刻な問題だ。患者の命を救うものの、同時に貧困に突き落とす高価な薬を処方すべきかという難しい決断を迫られるためだ。

英語からの翻訳:佐藤寛子

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