児童労働ゼロ目指す「ブラックサンダー」 なぜ値上げ?
チョコレートの原材料価格の上昇が、安価なチョコレートにまで波及している。
有楽製菓の「ブラックサンダー」は、世界で最も安いチョコレート菓子の1つだろう。1個30円と、1994年の発売開始からずっと同じ価格で販売されてきた。それだけに、3月1日から35円に値上げされたことは、日本のチョコレートファンに驚きを与えた。
有楽製菓は2019年、児童労働対策カカオに切り替えるためスイスのバリーカレボー社からも調達するようになった。このいわゆる「サステイナブルカカオ」はそうでないカカオより価格が高いが、同社は「販売価格を変えない方がより広く手にとってもらえるので、結果としてより多くの消費者が児童労働問題に関わることになる」(広報)との考えから、コストを小売価格には転嫁しなかった。では、なぜ今値上げなのか?
バリーカレボーの22年9~11月期決算外部リンクによると、カカオ豆は3年ぶりに需要が供給を上回り、平均8.1%値上がりした。
砂糖も同様に値上がりした。インドからの輸出が減り国際価格は1.4%と微増したが、欧州市場では在庫の減少やエネルギー価格高騰により92%近く上昇した。
ミルクチョコレートに使われる乳製品も高い。牛乳価格は22年4月をピークに下落傾向にあるが、それでも前年同期を15.7%上回った。
バリーカレボーは主に、原材料の価格変動を有楽製菓など卸先の企業に転嫁する価格モデルを採用している。契約締結から納品までの間にインフレの影響で原材料価格が上昇した場合、その差は有楽製菓が負担する。
同社の広報担当者フランク・カイデル氏は「私たちはこれが双方向にとって公平な価格モデルだと考えている。原材料や輸送費の価格が下がれば、取引先の負担は減る」と話した。
インフレに見舞われているのはチョコレートだけではない。スイスの食品大手ネスレは、2022年に全商品の価格を平均8.2%引き上げた。ただ看板商品「キットカット」など菓子類は、同社の製品群の中で最も値上げ幅が小さかった。
※動画中、有楽製菓がバリーカレボー社からカカオを調達し始めたのは「2年前」ではなく「3年前」の誤りです。字幕のみ修正しています。
編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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