連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は今年で創立50周年を迎えた。民間の科学研究所から国の大学に姿を変え、今では世界の大学トップ25の常連に成長。そのEPFLが生み出した世界に誇る科学的・商業的発見を紹介する。
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コンピューターマウス(1970年代の終わり):ジャン・ダニエル・ニクー教授の研究室で開発されたマウスは、優れた人間工学的デザインのおかげで成功を収めた。これがきっかけでLogitech外部リンク社が設立され、同社は従業員9千人を抱えるパソコン機器大手に成長した。
デルタロボット(1985年):レイモン・クラヴェル外部リンク教授が発明したロボット装置。包装業界にとっては画期的な技術革新で、チョコレートの箱詰めなどの作業では工業規格となっている。
グレッツェルセル外部リンク(1991年):植物の光合成をヒントに開発された色素増感型太陽電池。発明者のミヒャエル・グレッツェル教授の名前を取ってグレッツェルセルと呼ばれる。実用的で低コストなのが特徴だ。
プログラミング言語Scala外部リンク(2003年):マルティン・オデルスキー氏がJavaなどのプログラミング言語を簡素化するためEPFLで開発。Twitter、Apple、各種メディア(ガーディアン、ニューヨークタイムズ、ハフィントンポスト)のほか、LinkedIn、UBS銀行、Airbnb、通販サイトZalandoなどで使われている。
標的刺激外部リンク:脊椎用インプラント「e-Dura外部リンク」 と神経再建・直接電気刺激の研究が合体して誕生。ローザンヌ大学病院の医師とEPFLの研究者たちが昨年、頸椎損傷による麻痺患者3人に対し、脊椎の特定の地点にインプラントを埋め込み、正確な電気刺激を与えてリハビリを行った。その結果、歩行が可能になったほか、最終的には電気刺激がなくても足の筋肉を動かせるようになった。
今年で50周年
EPFLは50周年を記念し新たなロゴを発表。スイスの国旗にちなみ、文字は赤色だ。
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マルティン・フェテルリ学長はブランド化されたEPFLという4文字のロゴデザインについて「若く、ダイナミックで探求心にあふれ、技術的で国際的な影響力を持つスイスの学校―という要素を体現した。スタートアップ企業が急速に成長し、今や立派な大人になった」とコメントした。
EPFLキャンパスには50周年を記念し新しい公共スペースが登場。ショーや劇、コンサートに使われるという。
長い歴史
EPFLはもともと民間の学校だった。1853年、民間のイニシアチブによって「ローザンヌの特別学校」として誕生し、当時の学生数は11人だった。
その後、何度か名称を変え、ローザンヌ大学技術研究所になった。連邦議会の決定を経て1959年1月1日、国内2校目の連邦工科大学(チューリヒ校がすでに存在していた)として現在の名称になった。
EPFLはその後の50年で大きく変貌を遂げた。キャンパスは移転・拡大し、教育の分野も広がって学生数は10倍に増加。国際的にも評価の高い大学に成長した。
記念イベント
EPFL50周年を記念し、2019年は様々なイベントが行われる。9月14、15日のオープンキャンパスは約3万人の来場者を見込む。10月18日には「オープン・サイエンス・デー」が開かれる。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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電動飛行機「ソーラー・インパルス2」で世界一周飛行を達成して9カ月。ボルシュベルク氏は今、新しいミッションに挑戦している。
このスイス人パイロットは、5人の航空機専門家とともにスタートアップH55社(前身はHanger 55)を立ち上げ、クリーンな航空機(囲み記事参照)の未来に賭けて、現在ヴァレー州ローヌ谷のシオン空港で電動飛行機のテスト飛行を行っている。
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