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2018/12/10 10:30
スイス西部のジュネーブを拠点に活動するスイス・ロマンド管弦楽団が、今年で創立100周年を迎える。創設者のエルネスト・アンセルメは卓越した指揮者であり、著名な作曲家たちとも深い親交があったことから、楽団は国際的にも名を知られていた。偉大な指揮者アンセルメの残した遺産と後継者たちを、スイス公共放送 RTS の映像で振り返る。
一流の交響楽団を持つチューリヒ、バーゼル、ベルンにならい、アンセルメはスイス・ロマンド管弦楽団を創設し、1918~67年の49年間、同楽団の指揮者を務めた。英レコード会社デッカと契約してからは膨大なレパートリーを録音したことで、スイス・ロマンド管弦楽団は世界中で名声を得た。特に20世紀のフランス、ロシアの楽曲の演奏で良く知られていた。アンセルメはラヴェルやラフマニノフ、ドビュッシーとも深い親交があり、またストラヴィンスキーの重要な作品の初演の数々も手掛けた。
レディー・ガガとの共演も?
スイス・ロマンド管弦楽団は今、国際的な名声を再び取り戻そうと努めている。現在の団員数は112人。ジュネーブの「ヴィクトリア・ホール」を本拠として活動しているが、建物の建設計画も進行中で、2023~24年までには新しいコンサートホールが完成する予定だ。
スイス・ロマンド管弦楽団はコンサートで演奏するだけではなく、ジュネーブ大劇場(Grand Théâtre de Genève)で公演されるオペラのオーケストラも務めている。17年1月には、英国人指揮者のジョナサン・ノットが音楽監督に就任した。先ごろ放送されたスイスのラジオ番組では、どんなスターと共演したいかという質問に、即座に「レディー・ガガ」と答えた。
ノッツが就任する前の16年12月には、スイス・ロマンド管弦楽団が初めて監査を受けた。12年以降、マネジメントの交代が続いたためだ。その監査では、芸術パフォーマンスのレベルが「不十分」だと判断された。監査を担当したスティーブ・エメネゲールは、「スイス・ロマンド管弦楽団を本来のあるべきレベルに戻すのは、ノッツ氏に与えられた任務だ」と述べている。
(RTS/swissinfo.ch)
(英語からの翻訳・由比かおり)
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国連オーケストラ、美しい音楽を奏でる人道支援活動
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昼間は世界の結核撲滅のために世界保健機関(WHO)で活動し、夜はオーケストラでチェロを演奏 ― そんな二つの顔を持つ医師がいる。彼は、国連の職員などで結成する国連オーケストラの一員だ。
クリスチアン・リーンハルト医師がWHOの伝染病学者としてインド、エチオピア、ベトナム、そのほかの結核リスクの高い地域に行くときは、チェロを持参することはない。
だが、新しい治療法を試すハードなフィールドワークを終えて夕方ホテルに戻れば、ノートパソコンを開いてイヤホンをつけ、楽譜をめくりながらオーケストラの楽曲を聞くこともある。国連オーケストラの団員であるリーンハルトさんの、次のコンサートに備えた練習のやり方だ。
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モントルー・ジャズフェスティバル これまでの枠から飛び出す!
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2017/04/04
6月30日から7月15日まで、第51回モントルー・ジャズフェスティバルがスイスのレマン湖畔で開催される。今年は、ジャズの領域を大幅に越え、モントルーという場所にもこだわらず、さらに音楽の多様性を創作するといった「これまでの枠から飛び出す」フェスティバルとなる。演奏ジャンルはジャズだけでなく、ロック、ポップ、テクノ、クラシックにまで広がるーー。そんな音楽祭はもはや「モントルー・ジャズ」とは呼べない?それとも、それこそが「自由な」ジャズ理論に沿ったものなのだろうか?
「中身が濃くて強烈で美しいものが満載!」と同フェスティバルのディレクターであるマシュー・ジャトン氏が断言する今年のプログラムには、トム・ジョーンズ、アッシャー、ペット・ショップ・ボーイズ、ローリン・ヒル、グレイス・ジョーンズ、エリカ・バドゥ、フェニックスといった豪華な出演者の名前がラインアップ。スイス国内では、チューリヒのデュオ、ディーター・メイヤーとボリス・ブランクによる1980年代のエレクトロ・ポップグループのYello(イエロー)が初登場することも注目を浴びている。
ジャンルごとにプログラムを見ると、ジャズだけでなく、ポップ、テクノ、ロックも目立つ。もはやジャズフェスティバルではないという批判的な意見も聞かれる。
ジャズはたった2割
3月30日に公開されたプログラムには、ジャズのみだった創設時の1967年とは異なり、様々なジャンルのアーティストが幅広くセレクトされている。元来の伝統を発展させ「モントルー・ジャズ」というブランドを拡大させた音楽イベントは、今ではジャズがたった2割を占める。
モントルー以外の場所でもコンサート
広報担当のマーク・ゼンドリニ氏は、「ジャズにこだわらずバラエティーに富む今年のプログラムは、モントルー以外の歴史ある瞑想的な場所でも開催するのが特徴」と言う。それは、ジャズ本来の自由な発想に起因した「型にはまらない幅広いエンターテイメント」だという。モントルーという本来の会場に限らず、バイロンの叙事詩で知られるシヨン城や、サン・モーリスにある1500年以上の歴史を誇るスイス最古の修道院でも、バイオリンやパイプオルガンによるコンサートを行う。スイス人ジャズ・バイオリニストのトビアス・プライシクがエレクトロ・アコースティックを奏でるという。
今秋、恵比寿でモントルー・ジャズフェスティバル・ジャパンを主催する原田純一氏も、「スイスと同じスピリッツ」で、「ジャズという言葉を1個のキーワードにして、大人が楽しめる質の高い音楽を広げようと思っていて、カテゴリーに関係なく聴いて良いと思える音楽を、ジャズでないと言われても、ジャズフェスティバルという名前で出していこうと思っている」と語る。
そんな原田氏が個人的にお勧めする今年のライブは、ザ・シネマティック・オーケストラやシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ。「大人が楽しめる洗練されたイベント」を目指す日本でのフェスティバルにも彼らを招きたいとの期待を込める。
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2015/02/13
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