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ハロウィーン、どうやってスイスに浸透した?

ハロウィーンのかぼちゃ
© Keystone / Christian Beutler

10月31日はハロウィーンの日だ。スイスでは1990年代半ばから広く知られるようになったが、こうしたイベントに眉をひそめる人もいる。スイスで浸透するきっかけを作ったのは?ハロウィーンはスイスで定着するのか?

「Süsses oder Saures!/Des bonbons ou un sort!(ドイツ語/フランス語で『トリック・オア・トリート』の意)」。30年前のスイスであれば、玄関の前で魔女や骸骨のコスチュームに身を包んだ小学生2人がこう叫んでいても、ほとんどの人は意味が分からなかっただろう。

ハロウィーンがスイスに少しずつ根付き始めたのは1990年代半ばだ。ザンクト・ガレンの地方紙タークブラットは2018年、スイスのハロウィーンは今や、ドイツのビールの祭典オクトーバーフェストばりに「町や田舎を盛り上げている」と記事外部リンクに書いた。

一方で「文化悲観主義者は国内の慣習が脅かされていると見ている」とも伝え、こう続けた。「特に福音派キリスト教徒は、ハロウィーンがオカルトや悪魔崇拝に関わるものだとして拒絶反応を示している。だがこれは、ハロウィーンはかなり前から宗教的性格を失い、大部分が商業化されているという事実を無視したものだ。ハロウィーンの責任は神学者ではなくむしろ民俗学者にあり、国内での普及に関してはマーケティング専門家とイベント主催者にある」

民俗学者のコンラート・クーン氏によると、ハロウィーンは1990年半ば頃から、フランスからスイスのフランス語圏に、そしてスイスのドイツ語圏へと伝わっていった。それまでスイスでは、ハロウィーンを気に掛ける人はいなかった。

大手小売業者やメディアがハロウィーンに関心を持つようになったのはそれから数年後のことだが、スイスのハロウィーン人気を押し上げたのは、実は農家だった。2010年に発表されたクーン氏の論文「Halloween und Kürbisfest zwischen Gegenwartsbrauch und Marketing外部リンク(仮訳:カボチャ、商業、カルト~現代風習とマーケティングの間にあるハロウィーンとカボチャ祭り)」によると、農家はハロウィーンに使われるカボチャを新しい収入源として発見したという。

立役者となったのは、チューリヒ州のユッカー兄弟だ。マーケティング力に長けた彼らの農場はすぐさまスイス全土で、カボチャの大量生産、巨大カボチャピラミッドやカボチャスープ、最も重いカボチャを競うコンテストなどのイベント開催で知られるようになった。メディアがこれを取り上げると多くの農家が追随し、それまで馴染みのなかったカボチャは瞬く間にスイスに浸透していった。今ではあらゆるところでカボチャが売られている。

1991 年、スイスで販売されたカボチャは 230tだったが、2000 年までに約 10000 tに達した。

「ユッカー兄妹はイベント業界における11月の空白期間をうまく利用した。大手小売業者に加え、遊園地やケータリング施設、コスチュームショップも興味を示し、高い売上げを達成した」(クーン氏)

ハロウィーンの仮装をした人
ハロウィーンのコスチュームに身を包むスイス人 Keystone / Laurent Gillieron

若者による器物損壊

しかしその後、ハロウィーンは人気に陰りが出る。国内二大スーパーマーケット、ミグロとコープのハロウィーン関連商品の売り上げは2007年に急落した。

クーン氏によると、ハロウィーンに関するメディア報道も同時に変化した。「以前の報道は好意的で​、ハロウィーンは昼間のテレビ番組でも取り上げられていたが、今は主に、夜間に出歩く若者による器物損壊に焦点が当てられている」

フランス語圏日刊紙ル・マタンは2021年10月、地元警察によるハロウィーンの注意喚起を掲載。「近年、家の前や窓に卵が投げつけられるなどして、不愉快な思いをする人が増えた」、「『トリック・オア・トリート』の脅しは単なる遊び文句にすぎないはずだが、何もくれなかったりドアを開けてくれなかったりする人に対し、本当に復讐する子どももいる」などと伝えた。

記事によると、警察は、ハロウィーンへの参加は強制ではなく、拒否をされた場合は、「たとえ無害に見えても」報復してはならないと警告した。

ゾンビパーティー

10月31日になると、スイスのデパートは「ハロウィーンセール」を開催し、レストランのメニューにはカボチャ料理が溢れ、映画館では古典的なホラー映画が上映される。

地方紙タークブラットは、「薄気味悪いイベントは、ますます幅広い層に広まっている」とスイスでのハロウィーンの浸透ぶりを伝えている外部リンク。「多くの人がハロウィーンパーティーを企画して楽しんでいる。ゾンビに扮し、血色の液体の入ったグラスを持ってリビングルームを歩き回り、カボチャから『吐き出された』ワカモレをトルティーヤチップスにつけて食べるのだ」

スイスのハロウィーンは米国のような大規模な国民的祝祭には程遠いが、ハロウィーンを祝うスイス人は大人もコスプレに熱心で、驚くほど血みどろのメイクで競い合っていることもある。

ゾンビメイクの女性2人
ゾンビメイクを施したハロウィーン参加者 Keystone / Georgios Kefalas

米国のコスチュームは一般的にもっとユーモラスで風刺的なものが多いが、スイスではファスナハト(カーニバル)で風刺的な衣装を着るのが普通だ。

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スイスでハロウィーンの人気が高まっているのか、それとも下がっているのかは、はっきりしない。一部の地区では大人向けのイベントが開催され、コスチュームに身を包んだ参加者で溢れている。小さな子どもを持つ親たちはソーシャルメディアを使い、どの家が「トリック・オア・トリート」に対応しているのかが分かる地図を作ることができる。一方、そうしたイベントに参加しない通りはとても静かだ。

しかしクーン氏は、この行事が何らかの形で継続されると確信している。「1年のハイライト行事によって形作られる年間サイクルの必要性は今後も続くため、ハロウィーンは既存の習慣に革新的に統合されると想定できる」

またカボチャを彫り飾ることは、「暗い季節を彩る家庭の習慣」としてハロウィーンイベント抜きで定着しているとみる。

英語からの翻訳:大野瑠衣子校正:ムートゥ朋子

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