夕日に赤く染まったアルプスの山頂、蒸気を吹かす機関車、サラサラと音を立てる渓流。これらは20世紀への転換期に観光客がスイスに対して抱いていたイメージだ。当時のスイスの観光ポスターに大きな影響を与えた画家、アントン・レクジーゲル(1865~1936年)の作品に、ベルン芸術大学の若い芸術家たちが新たな息を吹き込んだ。
このコンテンツが公開されたのは、
ボヘミアで生まれたアントン・レクジーゲルは、画家としての全盛期をスイスで過ごした。1893~1909年の期間にレクジーゲルほど、スイスの観光ポスターに影響を与えた芸術家はいなかった。レクジーゲルの作品は、ベルエポック(良き時代)の最も美しい側面を表現している。しかし、1909年にオーストリアに戻るや否や彼の作品は忘れ去られてしまった。
しかし、スイスアルプス博物館外部リンクで1998年に最初に行われた展覧会で、レクジーゲルの作品は再び評価された。同博物館は、レクジーゲルの初期のポスター作品を最も多く所有しており、その数は90点を超える。
それから19年後の今、同博物館で開催中の展覧会「Anton Reckziegel, zürück in die Gegenwart外部リンク(アントン・レクジーゲル――現代に立ち戻って)」では、ベルン芸術大学の若い芸術家19人が、レクジーゲルの作品を手がかりに今日の視点からポスターをデザインした。
同展覧会はスイスアルプス博物館で4月23日まで開催している。
(独語からの翻訳・説田英香)
続きを読む
おすすめの記事
ただの宣伝ではなかった観光ポスター
このコンテンツが公開されたのは、
中央スイスの観光が本格的に始まってから、今年で200周年を迎える。これを記念し、ルツェルンのポスター・フェスティバル「ヴェルトフォーマット」では、観光ポスターに的を絞った作品が展示されている。スイス人デザイナーが手がけたポスター作品の数々を、スイス交通博物館でみることができる。
スイスにおけるポスターの歴史は、観光ポスターから始まった。既に前世紀に芸術とみなされていた観光ポスターは感情に訴えかける存在でもあり、今日までその輝きを失わずにいる。展示会場には交通手段をモチーフに、洗練されたデザインの作品が並ぶ。登山鉄道、船、バスなどの交通手段が、マス・ツーリズムを可能にした。
スイス交通博物館とルツェルン応用科学芸術大学が共同で取り組んだこのポスター展では、合計で36枚のポスターが展示されている。それらのデザインは時代を反映しているものの、スイスの観光ポスターの伝統は失われていないのが特徴的だ。
(写真・PHOTOPRESS、スイス交通博物館)
もっと読む ただの宣伝ではなかった観光ポスター
おすすめの記事
映画ポスターが伝える、時代の推移
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒのゼニックス映画館は、自律を目指す若者の運動「青少年センター」の一環として1981年に創立された。ここは映画上映の際に人々が集い、社会・政治的議論を交わす場として知られている。 30年以上に渡るゼニックス映画館…
もっと読む 映画ポスターが伝える、時代の推移
おすすめの記事
日本のポスター作家展 -桜と修行-
このコンテンツが公開されたのは、
同展で展示されている1950年代から今日までのポスター300点からは、日本のポスターの表現がいかに美しく、芸術的で、しかも多様な独自性に富んでいるかがうかがえる。 日本の禅の庭や工芸・建築などのデザイン世界に伝統的に存在…
もっと読む 日本のポスター作家展 -桜と修行-
おすすめの記事
日本のポスター作家展 スイスの館長、美しさと独自性を絶賛
このコンテンツが公開されたのは、
赤いワンピースの女性が鉄棒につかまり、横で黄色いワンピースの女性が前回りをしている。青空をバックに赤と黄が色あざかなポスター。「ウンナナクール」の文字が2人の間にひそかに書き込まれている。若い女性の下着を中心にしたワコ…
もっと読む 日本のポスター作家展 スイスの館長、美しさと独自性を絶賛
おすすめの記事
危険な共産党員からイスラム教徒へ
このコンテンツが公開されたのは、
国家のアイデンティティーと安全を守りたいという意思が現れることもあれば、外国人排斥思想や国境開放の必要性を訴えるものもある。政治家は外国人のどこがスイス的でどこがスイス的ではないかと定義づけ、移民政策の法案の是非を訴える…
もっと読む 危険な共産党員からイスラム教徒へ
おすすめの記事
外国人は無限に湧き出るインスピレーションの源
このコンテンツが公開されたのは、
ウイリアム・テルを思わせるたくましい男性が手に剣を持ち、襲いかかるヒドラを迎え撃とうとしている。赤い色が危険を訴える。背景にはスイスの白十字と燃えさかる集落。「爪から守れ!スイスはスイス人の手に」と書かれた1919年の…
もっと読む 外国人は無限に湧き出るインスピレーションの源
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。