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スイスを代表する道化師 日本でも公演

スイスと言えば時間に正確な国民性、そして時計作りの国と答える人は多いだろうが、「コメディー」を挙げる人はそう多くないのではないだろうか。しかし、スイスには喜劇においても独自の伝統があり、その第一線にいるのがマルタン・ツィンマーマンだ。日本でも公演した彼はチューリヒに凱旋。スイスのコメディーの幅を広げている。

スイスの道化師と言えば有名なのがグロック(1880~1959年)、ディミトリ(1935~2016)、ガルディ・フッター(1953~)ら。ツィンマーマンは自分で監督、振付、セットデザインを手掛ける。パフォーマンスにドラマ、悲劇、皮肉、ダンス、アクロバットをミックスして取り入れ、東京からニューヨークまで世界中の公演を通して自身のメッセージを届ける。ジャン・ポール・ゴルチエ、イザベル・ユペール、ジェーン・バーキンら名だたる有名人をファンに持つ。

ツィンマーマンは1970年、チューリヒ近郊の小さな町、チーズ製造者の家に生まれた。子供の頃から周りの人の物まねをするのが好きで、特に母親の身振りをまねるのを好んだ。しかし、彼は「道化師だとカミングアウトするのに20年」かかったと明かす。内装工の職業訓練を受けたツィンマーマンは、自身の舞台でそのスキルをいかんなく発揮している。

2つの公演(11月8〜11日の「1、2、3」、11月14〜16日の「ハロー」)の直前、自身のスタジオでswissinfo.chの取材に応じた。内容は彼のクリエイティブなプロセスについてで、そのどれもがとても斬新だ。

チャーリー・チャップリン、バスター・キートン、マルセル・マルソー、フェデリコ・フェリーニら偉大なパフォーマーのロールモデルを念頭に置き(「映画を撮っていても、カメラが回っていなくても、彼らは生粋の道化師だと思う」とツィンマーマンは語る)、ツィンマーマンが考えるのは、 21世紀の道化師の設定だ。自分はこの伝統から抜け出したと話すが、すべての新しい作品に、異なる文脈で自身を投影させている。

「(道化師の)伝統はまったく変わっていない。変わったのは設定だ。だから私は自分のキャラクターを現代の環境に置く。『1、2、3』でデザインした、未来の美術館のようなね」

心理学者と議論

ツィンマーマンの主たるクリエイティブ・パートナーは心理学者だ。社会、人、感情など幅広く議論し、それを身体的表現に落とし込む。

「言葉(で表現するの)は得意じゃない。特に今人気のあるスタンダップ・コメディは支持しない。TVと相性が良いからかな」。道化師は極めて幅広い要素を持つ。「道化師はただのキャラクターではない。社会を映し出すシルエットだ」。究極の与太者、ツィンマーマンはそう定義するー。私たちは道化師を愛し、憎み、疎ましく思う。そして道化師は私たちを安全な場所から追い出す存在なのだと。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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