金豹賞を手に喜ぶラヴ・ディアス監督
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第67回ロカルノ国際映画祭は16日、国際コンペティション部門でフィリピンのラヴ・ディアス監督の作品「Mula sa kung ano ang noon(英題 From What is Before)」に金豹賞を授与し、幕を閉じた。同作品は質の高さだけではなく、5時間半に及ぶ上映時間においても話題を呼んだ。
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2014/08/18 16:28
映画は1970年代、フィリピンの見捨てられた小さな村での話だ。この話を通じ、故・マルコス大統領の独裁政権下、抑圧に苦しむこの国の劇的な運命が綴られていく。
「この作品は、映画の時間と空間という概念を完全に打ち破るものだ。また映画とは何かという一般の認識さえも打ち破った」と、国際コンペ部門の審査委員長、ジャンフランコ・ロッシ氏は話した。「また、ドキュメンタリータッチで始まるのだが、徐々にイタリアのベルトルーチ監督が作りだす世界であるかのように変貌していく。つまり、フィリピンの70年代の歴史的事実を越えて、濃密な物語の世界に観客を引き込んでいく」
「Mula sa kung ano ang noon(英題 From What is Before)」
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そのほかの賞
一方、新人の監督を見出す「新鋭監督コンペ部門」では、メキシコのリカルド・シルヴァ監督の「Navajazo」が最優秀作品として金豹賞を獲得した。
「短編コンペ部門」では、英国のピア・ボーグ&エドワード・ローレンソン監督の「Abandoned Goods」に金豹賞が贈られた。
また、「新鋭監督コンペ部門」にノミネートされていたスン・ミ・ユ監督の「Songs from the Norht(北からの歌)」が、オペラ・プリマ賞を獲得している。この作品も北朝鮮をドキュメンタリータッチで描きながら、監督の父親が登場するなど監督の個人的な「物語」の要素も織り込まれた作品だ。
なお、スイスの映画は今年42本上映され、その存在感が高かった。コンぺティション以外のピアッツァ・グランデ広場の上映では、観客が選ぶ「観客賞」が、スイスのペーター・ルイジ監督のスイス国内での難民申請者の姿を描いた「Schweizer Helden(スイスの英雄たち)」に贈られた。
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ロカルノ国際映画祭2014 北朝鮮を深く洞察する「北からの歌」
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2014/08/15
スン・ミ・ユ監督の「北からの歌」が第67回ロカルノ国際映画祭で8日から3日間、上映された。これは、韓国の女性監督が米国のパスポートで北朝鮮に入り、そこで撮影したわずかな映像と北朝鮮が発表したニュースや歴史的な映像などをつないで制作したものだ。重い歴史を背負う朝鮮半島。監督は優しいまなざしで、かつての同国人とその国を深く理解しようと試みる。作品は映画祭の「新鋭監督コンペティション部門」にノミネートされた。
映画は、真っ黒な画面に浮かび上がる豆粒ほどの円形の中で演じられる、空中ブランコのシーンを映し出す。やがて平壌(ピョンヤン)空港に到着するアナウンスがバックに流れる。すると、手をしっかりとつないでいたはずの曲芸師の1人が落下する。それは、監督の脳裏に浮かぶイメージであり、朝鮮半島の南北の分断を象徴的に表現しているかのようだ。そして、分断によって生まれた北朝鮮を訪問することが監督の創作の核になっているのだと言いたいかのようだ。
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ロカルノ国際映画祭2014 アーティスティック・ディレクターに日本映画について聞く
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2014/08/14
残すところあと2日となった2014年のロカルノ国際映画祭。今年は「新鋭監督コンペティション部門」に五十嵐耕平監督の作品がノミネートされただけだったが、従来この映画祭で上映される日本映画の数は多く、観客にも重要視されてきた。同映画祭を1年前から指揮するアーティスティック・ディレクター、カルロ・シャトリアンさんに「日本映画とロカルノ」について聞いた。
溝口健二、小津安二郎、黒澤明の映画が大好きだというシャトリアンさん。こうした偉大な監督の伝統を継承しながらも、日本の映画界は絶えず新しい表現を生み出していると絶賛する。ただし、こうした新しいものを生み出す新人監督の作品を見つけるのは非常に難しいとも指摘する。
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ロカルノ国際映画祭 五十嵐耕平監督の「息を殺して」に高い評価
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2014/08/12
第67回ロカルノ国際映画祭の新鋭監督部門にノミネートされた五十嵐耕平監督の「息を殺して」が9日、ロカルノで上映された。2017年の大晦日から新年にかけゴミ処理工場で働く人々を描いた作品は、自然光の差し込まない巨大空間で展開される人間関係の希薄さのせいか、深い虚脱感が漂う作品だ。しかし、未来と現在が混在し、物語性においても独自な作品だとロカルノ関係者から高い評価を得た。
映画で描かれるのは、ゴミ処理工場での2017年から18年にかけての2日間だが、これといった出来事はほとんど起こらない。犬が1匹工場に迷い込んだぐらいだ。それを探すことで多少動きはあるが、あとはテレビゲームをしたり無気力な会話が女性1人を含む数人の工員の間であったりするだけだ。
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