ローザンヌの美術館が見せる、妄想・固定観念の美
ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションは、アウトサイダーアートの作品だけを展示する世界初の美術館だ。そこで、社会から離脱し孤独な環境の中に生きるアーティストたちの妄想・固定観念をテーマに、ビエンナーレ展が開かれている。同美術館の所蔵作品6万3千点の中から、毎回200点の作品が展示される。
館長のサラ・ロンバルディさんは開会式で、「アール・ブリュットの作品が、いろいろな美術館やギャラリーで展示されるようになった今日このごろであるが、私たちはこの美術館のアイデンティティーを再確認し、入念につくられた大規模なコレクションを紹介しながら、これからも国際的な代表的機関としての役割を果たしていきたい」と語った。
アール・ブリュットという言葉を提唱し5千点の作品を提供したジャン・デュビュッフェにより、この美術館は1976年に創設された。目下この高名なコレクションは、美術界との関係に無関心な人の創造的な作品が、それを売り出そうとする市場のターゲットになるといった問題に直面している。
アール・ブリュットの創作者には、「芸術家」ではなく「作者」という言葉が使われる。それは、その人たちの偶然性に左右されることの多い創作過程や、デュビュッフェのもともとの意図(「文化芸術よりも、生の芸術」)を尊重するからである。
今回の展覧会では、空中、水中、あるいは地上の乗り物がテーマに取りあげられ、絵画、デッサン、機械、、彫刻などの多様な作品が展示される。自分の世界に閉じこもり、そこから出ようとしない人たちにとって、移動のテーマは適しており、彼らに力や遊び心を喚起する。
(ミシェル・レアード、スイスインフォ)
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