ローザンヌ国際バレエコンクール 準決勝で20人中6人が日本人
1月31日に行われた「第37回ローザンヌ国際バレエコンクール」の準決勝で20人が選ばれ、うち日本人が6人も占める快挙となった。この6人は明日2月1日に行われる決勝に挑む。
決勝に進む6人は、女子が水谷実喜さん、石崎双葉さん、森高万智さん、根本里菜さん、男子が池田武志さん、高田樹 ( たつき ) さん。全員「信じられない」「本当にうれしかった」、などと語り喜びに沸いた。
自分の後ろに好きな男性
「まだドキドキしている。傾斜しているここの舞台に慣れないので、難しかった。舞台に出る前は緊張していたが、途中からやっと自分を取り戻せて踊れるようになった。明日もがんばりたい」
と、現在「英国ロイヤル・バレエ・スクール」に在籍する森高さんは興奮気味に語った。
「本当にうれしかった。でも今日はまだ自分の力を十分に出し切れなかった。明日はすべての力を出し切りたい」
と、今年2年目の出場を果たした、パリの「日仏芸術舞踊センター」の根本さんは喜びを語りながら明日への意欲を燃やした。
2人とも、コンテンポラリーのバリエーションでは、ショパンの「ノクターン」を踊り、パーティー会場で1人になりたくて庭に出るが、心は慕う男性への想いに揺れ動くなど、さまざまに感情に支配される女性を、繊細に表現した。森高さんは、
「自分の後ろに好きな男性が立っているとイメージして、その人のことを感じながら踊るようにした」
と言う。
かなりの生徒が指導で改善
今回出場者の中で最年少の、15歳になったばかりの水谷さんは、
「コーチの先生に、まだ若いのだからその若さを十分に表現して踊るようにと、言われたのでそのようにした。クラシックのコーチのモニック先生はあこがれの方で、指導されたことはすぐその場で吸収するようにした。夢に描いていたローザンヌに来られただけでうれしいのに、20人の中に選ばれて信じられない思い。両親にすぐ電話した」
と語った。
「決勝に残って信じられない。とにかく一生懸命踊った。でも楽しみながらここまできた。コンテンポラリーの『スプリング・アンド・フォール/春と秋』は自然に、風を感じるようにして踊ることが大切だという指導を受けたので、そのようにした」
と表現が抽象的で難しいコンテンポラリーをこなした池田さんは、喜びを素直に表現した。以上の2人は埼玉県の「アクリ・堀本バレエアカデミー」の生徒で、1つのバレエ学校から2人も決勝に残るという、めずらしい例となった。
コンテンポラリーバリエーションには、ショパンの「ノクターン」や「シンデレラ・ストーリー」などのように表現するものが分かりやすいものと、「バッハ組曲II」などのように抽象的表現の作品があるが、
「たとえ抽象的な作品でも、ダンスの言語である体の動きで、観客に感情や表現を伝えなくてはならない」
とコンテンポラリーのコーチ、ラウラ・カザニガ氏は言う。そして、
「われわれは1人の生徒にわずか4、5分のコーチしかできないが、彼らが作ってきたものをちょっと変えたり、付け加えたり、方向性を与えたりできたらそれでうれしい。実際今日の準決勝では、かなりの生徒が指導を飲み込んでくれて、自分のものにしているのが見て取れた」
と語った。
swissinfo、ローザンヌにて 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした世界で唯一の国際コンクール。その目的は、伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。「英国ロイヤル・バレエ・スクール」、「スクール・オブ・アメリカン・バレエ」など、世界60カ国以上の学校、バレエ団が協力している。
今年は31カ国192 人 ( 男子42人、女子150人 ) の候補者の中から、21カ国75人 ( 男子22人、女子53人 ) が選ばれた。
予備審査は10月にローザンヌで行なわれ、コンクールの「アーティスティック委員会 ( artistic comittee ) 」がDVD を観て審査した。
今年も昨年と同様、2つの年齢グループに分かれて練習を行い、練習点と完成度の点の合計で、練習最終日の1月31日に決勝進出者20人が選抜された。
選抜の指標は、才能、身体、技術的条件、自分を表現する力、感性と想像力を持って曲に乗る力、明確な理解力、さまざまなダイナミックな表現に合わせて動ける技量、動きを自分のものとし、それぞれの動きを組み合わせる力など。
2月1日の決勝では20人全員が踊り、約7人の入賞者が選ばれ、同額の奨学金を受け取り一流の国際的バレエ学校やカンパニーに留学できる。
なお、2007年まではバリエーションを3つ踊っていたが、昨年からクラシックのバリエーション1つと、コンテンポラリーのバリエーション1つを課題に選ぶことに決まった。
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