ローザンヌ国際バレエコンクール、15歳の挑戦
今年も「第36回ローザンヌ国際バレエコンクール」が1月29日からスタートした。出場者の中で4番目に若いので「4」のゼッケンをもらい、5日間の練習に挑む福田安希代 ( あきよ ) さん15歳。その姿を追った。
出場の合格通知が今年は遅れ、やっと届いた時は本当にうれしかった。「お姉ちゃんも出場したコンクールにわたしも参加でき、最高の幸せ」と目を輝かせる。
今回は参加者全員が決勝前日まで5日間の指導を受け、最終的におよそ20人が選ばれ決勝に臨む。あくまで伸びる可能性を秘めたダンサーに留学の機会を与えるのが目的のこのコンクール。それだけにこの間にぐんと伸び、可能性をアピールできる人にはチャンスが多い。しかし、言葉も不自由な環境に上手に、早く適応するのは容易ではない。日本からの参加者17人の1人、安希代さん15歳の挑戦ぶりをローザンヌで追ってみた。
あこがれのモニックさんに指導を受ける
練習が始まって2日目、コンテンポラリーのコーチが15~16歳グループに、英語でステップや振りを指導している。安希代さんにはすべて目新しい動きばかり。それでもリラックスして一つ一つの動きを納得しながら自分のものにしている様子。
「すごく楽しい指導だった。英語も大体分かったし。参加できて本当によかったと思う。毎日新しいことを吸収している感じ」
と言う。特に外国人は動きが大きいので、自分もこれから動きを大きくしていきたい。ただ英語の大切さは痛感した。もっと勉強してきちんと話せるようになりたいという。
3日目、あこがれのパリオぺラ座のエトワールだった、モニック・ルディエール氏に、クラシックの個人指導を受けた。
「肩を少し落として。音楽にもっと乗るようにと指導を受けた。4分間だけどモニックさんの指導を受けられるなんて信じられない」
と興奮して報告してくれる。それにこの日は、居並ぶ9人の審査員の前までダッシュして走って行き、ピタッと止まり自己紹介した。日本語でもよかったので「福田安希代です。よろしくお願いします」と大きな声で言った。こんな経験も初めてだという。
「ここに来て急に背が伸びるわけでもないし、できることは、顔の表情を豊かにし、目線をきちんと使って相手を見て自己アピールするよう指導してきた」
と6年間生徒をローザンヌに送り続けている、「アクリ・堀本バレエアカデミー」の堀本美和先生。小柄なのに大きく見える安希代さんの秘密はその表情の明るさと豊かさにあるのかもしれない。
神様からいただいたチャンス
それでも、外国の子はきれいに見えたり、背が高かったりと感じて圧倒されない?
「確かに、顔が小さかったり、きれいだと思うけど気にしないようにしている。毎年コンクールのレベルも違う中で、予選を通過してここに来られたこと自体、神様からチャンスをいただいたと思っているので、それを大切にしたい」
と謙虚でありながら強い意志の感じられる言葉が返ってきた。
お母さんも「やるだけのことをやって来なさい。楽しんで来なさい」と送り出してくれたのだから、周りに気を取られず、十分に与えられた機会を楽しめたらと願う。
3歳で、2歳違いのお姉ちゃんと一緒に自然にバレエを始めていた。しかしいやになった時もあり、この道を選ぼうと決心したのは11歳の夏。学校が終わったら7時から毎晩10時30分ぐらいまで練習する。日曜も稽古場でほとんど過ごしてしまう。だが本当にダンスが好きなのだという。だから時につらいことがあっても続けられる。
特にバレエの何が好きなの?
「舞台に立って踊ること、みんなに見てもらうこと」
という答え。しかし一番のあこがれは、ローザンヌコンクールでの実況中継のテレビに自分が映ることだそうだ。
決勝戦ではカメラが舞台裏から出場するダンサーの姿を追い、踊り終わっても舞台裏に入る姿をじっくりと追う。そんな風に自分も映ったら、これ以上の幸せはないそうだ。実はお姉ちゃんが3年前、決勝まで出て大きく映っていたらしい。
安希代さんも映るといいですね。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) ローザンヌにて
1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした世界で唯一の国際コンクールである。その目的は、伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。「英国ロイヤル・バレエ・スクール」、「スクール・オブ・アメリカン・バレエ」など、世界40カ国以上の学校、バレエ団が協力している。
3年前から、ビデオの予選が行われるようになった。今年は予選を通過した75人が参加。そのうち17人が日本人。韓国からも9人が参加している。
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