ローザンヌ・ウエストにワッカー賞
今年40周年を迎えるワッカー賞に、ローザンヌ・ウエスト ( Lausanne West ) の九つの自治体が例外的に共同受賞者として選ばれた。
受賞したのは、ビュシニ ( Bussigny ) 、シャヴァンヌ ( Chavannes ) 、クリシエール ( Crissier ) 、エキュブラン ( Ecublens ) 、プリイ ( Prilly ) 、ルナン ( Renens ) 、サン・シュルピス ( St-Sulpice ) 、ヴイラー・サントゥ・クロワ ( Villars-Ste-Croix ) 、ローザンヌの各自治体。
市区精神
スイス文化財保護協会 ( Schweizerische Heimatschutz/SHS ) は毎年、町の形成開発に力を入れている地方自治体にワッカー賞を贈っている。「地域開発」「既存の居住地域の価値を高める」「共通のアイデンティティの創造」という点で調和の取れた取り組みを行っているという理由で、1月18日にローザンヌ・ウエストの受賞が発表された。
今年のワッカー賞は例年と違い、ポストカードになりそうな牧歌的な風景を保っている場所ではなく、一つのビジョンに対して贈られた。ヴォー州の地域の一部を新たに組織し直すこのビジョンは、住民の居住クオリティを高めようとする動きに大きなうねりをもたらした。スイス文化財保護協会は、「市区精神」というこの共通の意思を高く評価した。
混沌から魅力的な街づくりへ
かつて農村地域の色が濃く残っていたローザンヌの西側一帯は、その後、混沌とした発展を遂げた。その結果、魅力の少ない人口集中地域となり、道路や鉄道などの主要交通網、駐車場、ショッピングセンター、倉庫、空き地が猥雑に混在することになった。ひいては環境破壊や交通問題を招き、生活の質を低下させ、地域の社会的、経済的発展を脅かすまでになった。
そして2000年、ヴォー州と九つの自治体は、地域の未来を考え直そうと建設の一時停止 ( モラトリアム ) に合意した。この地域には現在、7万5000人が居住、5万人が就業している。将来、住民はさらに2万人から3万人増加すると予測されており、管轄事務所はこれに備えるとともに、アイデンティティを失わないような地域形成に力を注ぐ。
以前のローザンヌ・ウエストのように社会の死角となっている人口集中地域はほかにも存在する。抑制の効かない耕地利用、交通網にかかる過度の負担、個性のない都会空間など、これらの地域は今日、政治や社会にとって見過ごせない大きな問題になっている。
ヴォー州の地方自治体がワッカー賞を受賞したのは今回で4回目。1973年にサン・プレ ( Saint-Prex ) 、1990年にモントルー ( Montreux ) 、2009年にイヴェルドン・レ・バン ( Yverdon-les-Bains ) がそれぞれ受賞した。
スイス文化財保護協会 ( Schweizerische Heimatschutz/SHS ) は毎年、一つの地方自治体にワッカー賞を授与している。賞金は2万フラン ( 約171万円 ) とシンボル的な金額で、授与の価値は模範となる活動を公式に認めることにある。
ワッカー賞が初めて授与されたのは1972年。ジュネーブのビジネスマン、アンリ・ルイ・ワッカーがスイス文化財保護協会に遺贈したことによる。これ以後も遺贈が続き、今日までワッカー賞の授与が続いている。
ワッカー賞は、町の景観や居住区の開発に関して特別な活動が認められる地方自治体に贈られる。1970年代にはシャフハウゼン州シュタイン・アム・ライン ( Stein am Rhein ) やグラウビュンデン州グアルダ ( Guarda ) 、ヴァレー/ヴァリス州エルネン ( Ernen ) などが受賞した。当時の受賞理由は、これらの町が歴史ある古い中心部を保存していることだった。
現在では、居住地域を現代の視点で綿密に再開発している地方自治体に焦点が当てられている。特に重点を置くのは、新しく建設する際の造形クオリティの促進、歴史的な建築物の保護、模範的で現代的な土地開発など。
( 出典・スイス文化財保護協会公式サイト)
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