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中世の街ローザンヌ、緑あふれる未来の都市の実験場に

ローザンヌ・ジャルダン開催中は、街のいたるところに「庭」が出現する swissinfo.ch

スイス西部のローザンヌでは現在、4、5年に1度のガーデニング・フェスティバル「ローザンヌ・ジャルダン」が10月11日まで開催中だ。中世の趣が残る街が、期間中はアバンギャルドで遊び心に富んだ緑の実験場に変身。世界の大都市で緑化対策が課題となる中、緑あふれる都市の未来をここで垣間見ることができる。

 1997年から続くローザンヌ・ジャルダン外部リンクには、まるで伝説のような実話がある。クリストフ・ポンソーさんとアドリアン・ロヴェロさんがローザンヌ中心部の地図の上に前かがみになり、15個ほどの種を手から地図の上に落とす。すると、落ちた場所からは、たくさんの花が咲き乱れる、という話だ。

 ローザンヌ・ジャルダンでは、街の至る所に様々な「庭」が出現する。パリ出身の建築家であり造園家のポンソーさんと、ローザンヌ出身のデザイナーのロヴェロさんは、2009年のローザンヌ・ジャルダンにも参加したことがあり、今年はキュレーターとして活躍する。モットーは「ランディングス(Landings)」。英語で「降り立つ」という意味で、庭が街にやってくるという意味を込めてつけられた。

 「種が落ちる場所は偶然だった。落ちたところはローザンヌの地勢がよく表れている。小道、公園、建物の屋上などだ」とロヴェロさん。坂の多いローザンヌには、丘、急勾配の道、階段、展望台などが多数あり、歴史あるこの街の魅力を彩っている。また、土地や路地は中世の面影を今も残している。

 ローザンヌは緑の街としての一面も持っている。街の下には湖、上には森が広がる。森は丘の上にある旧市街から目と鼻の先にあり、森の先端は街の中心部、旧工業地域フロンの南端にある。

 100年以上前に建てられ、今では改築された旧倉庫2棟の間には狭い袋小路がある。そこから上を見上げると、つるされた「庭」があることに気付かされる。植物の鉢植えが、路地を挟んだ窓から窓へとひもでぶら下がっている。住民たちの仲の良さが象徴されている。イタリアのナポリでは洗濯物を外に干すが、ここでは植物というわけだ。

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特権のある街

 ローザンヌ・ジャルダンのコンセプトは、緑のないところの緑化。緑があることに驚き、感心し、歩行者に話しかけ、街や植物の世界と自身との関係性について問うことが目的の一つだ。

 地元紙ヴァントキャトラーのティエリ・メイエ編集長も、自身のコラムでこんな疑問を投げかけている。「街は風景か?自然に枠は必要か?利用可能な空間に変化はないのか?建築は同時に破壊を意味するのか?」。これに対し、建築家のポンソーさんは「ローザンヌは特権のある街。(こうした疑問が解決できるような)実験をするにはもってこいの場所だ」と答える。「4、5年に1度、街の園芸家330人は様々なことを試したり、他の芸術家と自分自身とを比較したりできるのだ」

 街中に植物の自動給水装置を設置するわけにはいかないので、ローザンヌ・ジャルダンは市の公園緑地課と密接に協力している。また、世界中の芸術家、デザイン専攻の学生、建築科の学生、造園家などにガーデニング・コンクールへの参加も呼びかけている。コンクールでは400件のプロジェクトが提出され、27件が選出された。そのうち欧州のプロジェクトが9件、米国のプロジェクトが2件含まれている。

メインはアーバン・ファーミング以外

 街の緑化はトレンドなのだろうか?「もちろんだ」とポンソーさん。「どの大都市でも大規模な試みが行われている」

 実際、ベルギーのブリュッセル、チェコのプラハ、カナダのモントリオールでは、都会での農業を意味する「アーバン・ファーミング」に関連した催しが行われており、カナダ発祥の移動式展覧会「キャロット・シティ(Carrot City外部リンク)」が今夏、ローザンヌで行われている。ジュネーブでも、初のガーデニング・フェスティバル(Genève, villes et champs外部リンク)が10月4日まで開催中だ。

 しかし、ローザンヌ・ジャルダンではアーバン・ファーミングを前面に押し出しているわけではなく、野菜栽培の区画は一つだけ。そこには、1950年代後半の窓付きのトマト栽培用ビニールハウスが建てられており、観客の目を引いている。

 このイベントで作られた庭の大部分は「都会で畑を作る必要性をアピールするというよりかは、庭のフォームに重点を置いている」とポンソーさん。「アーバン・ファーミングが中心のフェスティバルと比較すると、我々の催しは規模も大きく、開催期間も4カ月と長い。他に例のないイベントだ」

 そしてロヴェロさんは「ここでは本当に都会の中に庭がある。我々が興味あるのは、緑化が難しいところに緑を持っていくことだ」と付け加える。

 例えば、フランスのガーデニング・フェスティバル「ショーモン・シュル・ロワール(Chaumont-sur-Loire)」では、特にアバンギャルドな作品でも、既に存在する庭が利用されている。

 一方ローザンヌでは、まるで空から落ちてきたような「庭」がいくつもあり、全く予想しないものまで存在する。例えば、いくつもの柱が並ぶ建物正面を緑で彩った作品がある。柱と柱の間から草の束がぶわっとあふれ出て、新古典主義的な雰囲気がある。植物が街を支配するかのような、まるで世界が終わったあとの光景のようだ。

環境に優しい都市の緑化を目指して

 都会を緑化する方法はいろいろあるが、この作品のように建物の側面を植物で覆うのには注意が必要だと、ポンソーさんは語る。「建物の温度を下げたり熱を遮断したりする点においてはいいかもしれないが、単にデコレーションが目的だったり、人から歓心を得たりするために植物で側面を覆うのは疑問だ。なぜならそれには大量の水を必要とするからだ」

 柱の間に生えた草の束は「期間限定のイベントには適しているが、常時そのままにしておくのは良くない」とロヴェロさん。

 ローザンヌ・ジャルダンでは新しい緑化方法が実験できることが特に好きだと、ロヴェロさんは言う。「ここはいわば研究開発が行われる実験場。展示、会議、講座など100を超す催しが開かれるローザンヌ・ジャルダンは、人々の記憶に残る文化イベントだ。数年に1度しか開催されないので、皆、次の開催を心待ちにしている」

 未来のデザイナーや建築専攻の学生がこのイベントに参加することで、自身の仕事と植物との関係を考える良い契機になると、ロヴェロさんは考える。「植物に敬意を払い、生き物として捉えれば、植物が単なる飾りではないことが学べるはずだ」

(独語からの翻訳・編集 鹿島田芙美)

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