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日が沈んだ後のスイス

スイス人写真家のドミニク・ビュットナー氏が日中の撮影で被写体に当てるのは普通のライト。だが夜のライトは当て方も当てられるモノも特殊だ。その集大成を写真集「Dreamscapes(仮訳:夢景)外部リンク」に収めた。 

ビュットナー氏は著名なスイス企業や機関から撮影を請け負い、閣僚の公式写真撮影を2回引き受けた経験がある唯一の写真家でもある。いずれも写真家のベアトリス・ドゥヴェーヌ外部リンク氏との共同作業だ。

「光あれ」

日没後のビュットナー氏は何か特別な感覚が芽生えたかのようだ。日中には誰も行かないような「忘れ去れらた場所」を探し回る。全くの暗闇の中でカメラを設置し、シャッターを切る。手に持った大きなライトを被写体に当て、独自性にあふれた写真を撮る。

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ビュットナー氏が跡に残すのは幽霊のようなゴムブーツの影だけだ。光を駆使したそれらの写真を見た人は、そこが不思議の国なのか、それとも悪夢なのかを決して判別できない。

暗闇を助長

ビュットナー氏は日本やドイツ、イタリアでも夢のような風景を撮った。だがそこに国境はなく、どの国の写真かは分からない。

大半の写真はスイスで撮影された。そこでも絶対的な暗闇は高い山の上にしかない。ビュットナー氏はどうすれば暗闇を作れるか知っている。万能ドライバーを使って撮影に邪魔な街灯を取り外してしまったこともあるのだ。もちろん責任感の強いスイス人、ビュットナーさんは、撮影後には街灯を元通りに取り付けた。

ハイジの国ではないスイス

バーゼル出身・チューリヒ在住のビュットナー氏にとって、美化しただけではない、ありのままの祖国の姿を伝えるが重要だと話す。山崩れが起きた後の岩石の塊や洪水後のがれき、今にも崩れ落ちそうな田舎の山小屋など、彼の写真は静ひつながらスイスに起こっている消失や激動、変化を雄弁に物語る。

(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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