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大きく成長 ファントシュ

国際アニメーション映画祭「ファントシュ」が9月8日から13日まで、アールガウ州バーデン ( Baden ) 市で開催中だ。今年で7回目を迎えたアニメ祭は、物語の進行が重要な長編アニメに限らず、コンピューターゲームなどビジュアル一般にまで目を向け、多角的にアニメーションを扱うようになってきた。

2007年の前回には入場者数25%増を達成し、コンパクトなアニメ祭も知名度が上がってきている。「今回の目標は入場者1割増加」と主催者は意気込む。

注目のコンピューターゲーム

 「スイス人クリエーターの質に注目したい」と「ファントシュ( Fantoche )」のアートディレクター、ドゥシャ・キスラー氏が今回特に力を入れたのは、コンピューターゲームという「アニメーション」だ。チューリヒ美術高等学校との協力で、映画祭のセンターには生徒の作品が展示されている。

 150人のゲームデザイナーを対象にしたアンケート調査によると、スイスのゲームデザイナーの半数が外国で仕事をしているという。「ヨーロッパ諸国においてスイス人デザイナーの質は高いと評価を受けている」というキスラー氏の発言を裏付けるものだ。しかし一方で、優秀な人材が国外に流れてしまうことは、スイスの環境に問題があるためだと調査は指摘する。そこで今回は、スイス政府の文化推進団体である「プロ・ヘルヴェティア ( Pro Helvetia ) 」も協力し、9月11日には連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) の「ゲームラボ」についてなどのシンポジウムが開催される。

 展示場のスクリーンに映し出された「トセイフィヴァ( Tseifiva ) 」は、風を実際の風車に吹きかけると、その動きがスクリーンに投影される仕組みで、風の向きや強さを調整することでスクリーン上のイメージを動かしていくゲームだ。そのほか、玉が星を食べ続けながら迷路を動く「シリー・ビリー ( Silly Billy )」や、奔放に動く黒い毛玉の障害物ゲーム「 フェイスト ( FEIST ) 」など多数のゲームは実際に試してみることができる。

 コンピューターゲームは芸術か。出発点にあるのは芸術性か、企業や消費者のニーズなのか。さまざまな疑問はこれまでも語られてきた。しかし、ファントシュのみならず最近の映画祭は、この新しい映像現象を無視できなくなっている

アニメ祭であり続ける 

 ますます多角化の傾向にあるファントシュだが
「ファントシュはファントシュであり続ける」と語るキスラー氏にとって最重要部門は、何と言っても国際コンペティションであると強調する。国際コンペには51カ国から927本の参加希望作品が寄せられた。「ともかく出品希望作品が多かった」とキスラー氏は喜びの悲鳴を上げる。結局、ヨーロッパ諸国の作品を中心に39本に絞られた。

 「ムト ( Muto ) 」( イタリア/ブル ( Blu ) 作 ) は、屋外の大きな壁がセルの代わりになっている。壁に巨大な人物像を描き、少しずつ姿を変えて描き続けた膨大なショットを映し続けることで人物が大きな勢いを持って動く力作である。また、常連となっている日本からはシャープペンシルで描くのが特徴の和田淳氏の「そういう眼鏡」( 2007年、5分 ) も参加している。今回からスイスコンペティション部門を新しく設け、スイスのアニメーションクリエーターを重視する主催者の意思を示した。

 今年は初めて6人の子ども審査員を招き、子どもが選ぶベストワンも企画されている。アニメはやはり子どものものという原点で、子どもの評価は決して無視してはならない要素であることを大人が企画するファントッシュは思い出させてくれる。

7回目の正直

 これまで隔年で開催されていたファントッシュは「選考対象となる作品本数が膨大になったことなどから」、今年から毎年開催となった。資金については特に、今年になって新規に大きなスポンサーを獲得した。財政担当のアンドレア・フロイント氏は
「不景気にもかかわらず、非常に喜ばしい。毎年開催することが企業にとって魅力となった」
 とアニメ祭を拡大することが収入面で相乗効果があったと語る。
今年から2年間の予算180万フラン ( 約1億5800万円 ) の内訳は、連邦や州の援助36%、スポンサーからの寄付34%、チケット販売収入16%、その他となっている。

 欧州連合 ( EU ) のヨーロッパにおけるオーディオビジュアル文化を促進する「メディア企画 ( Media Programm ) 」が推進するイベントとしてスイスでは唯一、ファントッシュを選んだことも今後の活動を勢いづけるものになりそうだ。

佐藤夕美 ( さとうゆうみ ) 、バーデンにて、swissinfo.ch

9月8~13日
バーデン ( Baden ) 市 ( アールガウ州 )
映画館入場料大人16フラン ( 約1400円 )
マルチパス52フラン ( 約4600円 )
国際コンペ部門39本、スイスコンペ部門28本のほか5つの映画館で、長・短編、合計224本が上映される。スタジオジブリの「崖の上のポニョ」もスイスでは初上映となる。
国際部門とスイス部門のコンペの賞金はそれぞれ7000フラン ( 約62万円 )
結果は9月13日に発表となる。

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