大量のナチス略奪画 所有者死去でベルン美術館に遺贈
ナチスに略奪され、行方が分からなくなっていた絵画1400点以上を所有していたドイツ人美術品収集家コーネリウス・グルリット氏(81)が6日、死去した。ピカソ、セザンヌ、シャガールなどの作品を含むコレクションはすべて、スイスのベルン美術館に遺贈される。唐突の知らせに、同館は驚きを隠せないでいる。
グルリット氏とは何のつながりもなかったベルン美術館には衝撃が走っている。「なぜ私たちが?」とスイス国営放送の番組でマティアス・フレーナー館長は言う。フレーナー氏はコレクションの引き取りに非常に前向きだが、ベルン美術館は正式に遺贈を受けるかどうかはまだ決定していない。絵画がドイツの文化財にあたる可能性もあり、コレクションをスイスに移す際の手続きは困難が予想される。
グルリット氏はアドルフ・ヒトラー専任の美術商、ヒルデブラント・グルリットの息子。父の死後に譲り受けた大量の絵画の存在を長年隠し続けてきた。
しかし、独アウクスブルク当局が脱税の疑いで同氏の自宅を家宅捜査した2012年にコレクションが発覚。ナチスが略奪した絵画が含まれている可能性があることから、当局はコレクションを押収した。
グルリット氏と当局が妥協したのは今から約1カ月前。疑惑のある絵画については専門家が調べ、ナチスが略奪した絵画は持ち主に返却することを条件に、当局は同氏に絵画を返すことにした。だが、重病を患っていた同氏がコレクションを再び目にすることはなかった。コレクションのすべてをベルン美術館に遺贈するとの遺言を残し、6日に死去した。
コレクションには巨匠の作品も多く、パブロ・ピカソ、マルク・シャガール、ポール・セザンヌ、エドバルト・ムンク、アンリ・マティスなどの絵画が含まれている。
(写真: AFP、アウクスブルク検察)
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