建国記念日に救いのスポンサー
スイスの建国記念日は8月1日。建国の核となった原始3州が同盟を誓い合ったリュトリの丘で毎年、記念式典が行われている。
しかし、近年ネオナチが式典を妨害するようになった。それに対応する安全管理コストをルツェルン市は負担しきれないとリュトリまでの船を、8月1日には出さない決定をしていた。
毎年リュトリの丘で行われる建国記念日の式典は、今年も行われる可能性が高まった。連邦下院議員国民議会 ( 下院 ) 議員、急進民主党 ( FDP/PLD ) で企業家のヨハン・シュナイダー・アンマン氏を中心とする財界人グループが、リュトリの丘までの船が出る港があるルツェルン市に資金的援助を申し出たためだ。
財界の救世主
リュトリの丘はスイス建国の核となった原始3州が同盟の誓いを立てた丘であり、第2次世界大戦時には、ギサン将軍が国の連帯を呼びかけた場所として、スイスのシンボル的な意味を持つ。ここでは、毎年建国記念日に式典が催され、閣僚の代表が演説を行っている。
しかし、近年は一般市民のほかにネオナチが集結するようになり、安全管理コストが周辺の州の大きな負担となっている。昨年は、およそ200万フラン ( 約2億円 ) かかった。連邦政府が安全管理のための補助金は今年は出さないと決定して以来、記念式典の成り行きが注目されるようになった。
「機械・電気・金属産業協会 ( Swissmem ) 」会長で国民議会議員のヨハン・シュナイダー・アンマン氏を中心とする財界グループは、記念式典の安全管理コストを請け負うと申し出た。同グループにはスウォッチ ( Swatch ) のニコラス・ハイエック会長もいるという。
スイスのプライド
「スイスは、スイス航空の倒産以来、信頼性を失った」とシュナイダー・アンマン氏は援助の理由を語る。「われわれが他国とビジネスをしていく上で、売りたいと思う商品は、高い質と秩序を大切にする国で作られているという信頼が重要だ」と語り、リュトリの丘での記念式典は、スイスがこうした国であることを証明できる機会であると強調した。
個々の具体的な援助額は明らかにされなかったが、たとえば、ハイエック氏は30万フラン ( 約3000万円 ) を約束したという。連邦政府が拒否した、安全管理コストを同グループはカバーする意向だ。
連邦政府の立場
連邦政府のこの態度を多くのスイスマスコミは批判している。「民間企業が建国記念式典のスポンサーとなるのは、連邦政府の無能の証」と地元日刊紙ノイエ・ルツェルナー・ツァイトゥングは書いている。
州に対する批判も厳しい。チューリヒの日刊紙ターゲス・アンツァイガーは「安全管理に責任がある州に民間企業が資金援助するなど屈辱的」と非難した。
swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
ウーリ州フィールヴァルトシュテッテ湖畔にある。スイス連邦発祥の地として有名。ウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデンの原始3州が永久同盟を誓い合った場所。
1940年にはギサン将軍が、ドイツの侵略に徹底的に抵抗することをスイス国民に呼びかけた場所でもある。
毎年、建国記念日には小規模な記念式典が催されている。2000年と2005年には大統領が演説したが、ネオナチにより妨害された。
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