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独自のユーモアで日本の短編アニメ最優秀作品に

和田淳監督の短編アニメ「わからないブタ」より fantoch.ch

9月7日からアールガウ州バーデン市で開催されていた、第8回国際アニメ祭「ファントシュ」で12日、和田淳監督の短編アニメ「わからないブタ」が国際コンペティション部門の最優秀作品に選ばれた。


世界から集まる作品を選考するファントシュのアート・ディレクター、ドゥシャ・キスラー氏に聞いた。

独自のユーモア

 「わからないブタ」は、寝ている山のように大きなブタを6人の子どもが邪魔をするが、ブタはそれを相手にしないというストーリーだ。

 「和田淳は昨年もこのフェスティバルに出品し、われわれにとって初めてではない。彼の作品には毎回和田淳という人の個性が強く出ている。今回はシンプルな鉛筆画だが、それがかえって心を捉える」

 さらに
 「話はある意味でばかげたものなのだが、魅力に溢れており、また独特のユーモアで成り立っている」
 とキスラー氏は絶賛する。

 ほかの賞の選考委員たちは
 「厳格で、コントロールされた筆の運び、また閉ざされたばかげた世界を生得の独特のユーモアで作り上げている。一見曖昧に見える、作者本人の内的なロジックを、繰り返しや儀式的な描写方法で明らかにしていく素晴らしい作品」
 と評価している。

暖かいハンドメイドのタッチ

 一方、奥田昌輝氏の作品「くちゃお」は「新しい才能賞」に輝いた。ストーリーは、男の子がフーセンガムを噛んでいるうちに、できたフーセンと共に空に舞い上がるというものだ。

 「ファンタジーに富んだ素敵な話だ。遠近法の扱い方が、非常にユニークで人を引き付ける。美的な観点からも色々な実験をしている」
 とキスラー氏は高く評価する。

 ほかの選考委員たちも
 「水彩絵の具の輝くような画面が日本の古い独特なリズムと共に展開して行く。暖かいハンドメイドのタッチに感銘を受けた」
 と結んでいる。

短編アニメもハイレベル

 和田氏と奥田氏は2人とも東京芸術大学大学院映像研究課の学生で、山村浩二教授の指導を受けている。
 「優れたアニメ作家である山村氏が指導するようになって、東京芸術大学の学生のレベルは見違えるように高くなった」
 と毎年、多くの短編アニメを選別する立場から、キスラー氏は言う。

 また、
 「日本のアニメと聞くと、マンガ的な作風を想像しがちだが、実は日本の短編アニメは、マンガとは違ったさまざまなスタイルで作られている。ファンタジーに富んだ、個性豊かなものが多いし、ハンドメイドの職人風のスタイルとハイレベルの技術性が組み合わさっていて面白い」
 と評価する。ほかの国でも、こうした二つのスタイルの組み合わせは、よく見られるものだが、特に日本の短編アニメはマンガとまったく違うということを強調したいという。

 そして
 「日本の短編アニメのレベルは非常に高く、来年も作品を観るのが楽しみだ」
とキスラー氏は期待している。

アールガウ州バーデン市 ( Baden ) で2010年9月7~12日に開催された。
国際コンペティション部門は36本。そのうち、日本人作家4人の作品が上映され、和田淳作「わからないブタ」が最優秀作品に、奥田昌輝作「くちゃお」が「新しい才能の賞」に選ばれた。ほかの2本は、三角芳子作「Googuri Googuri」、銀木沙織作「指を盗んだ女」。4人の監督は、全員が東京芸術大学大学院映像研究課出身。
国際コンペティション部門以外にスイス・コンペティション部門の22本を含む、長・短編合計312本がバーデン市内の三つの映画館、五つのスクリーンで上映された。
国際部門、スイス部門とも最優秀賞の賞金は7000フラン ( 約58万円) 。賞金総額は3万900フラン ( 約320万円)。
今年のテーマはメルヒェンで、テーマ映画としてスタジオジブリの長編「となりのトトロ」も上映された。また「電信柱エレミの恋」の監督、中田秀人氏が制作の舞台裏を語った。
今年は6日間で3万3000人が入場し、過去最高を記録した。2005年には2万人、昨年は3万1000人だった。

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