あなただけに贈るピアノのクラシックコンサート―。スイス東部ダボスで5日から始まった若手演奏家らのコンサートフェスティバルで、ピアニスト一人と聴衆一人だけの「世界最小のコンサートホール」がお目見えし、来場者が自分だけのピアノの調べに酔いしれた。同フェスティバルではオールナイトの演奏会など、新しいコンセプトの音楽が来場者を楽しませている。フェスティバルは19日まで。(SRF/swissinfo.ch)
このコンテンツが公開されたのは、
「一人の演奏家、一人の聴衆、一つだけの特別なショー」を表現した「世界最小のコンサートホール」はガラス張りの空間で、中はグランドピアノが1台と、聴衆用の椅子が置かれている。聴衆は一人だけしか入ることができない。外から中の様子を見ることはできるが、音は聞こえない。ロンドンやジュネーブ、ドイツのハンブルクなどの都市がこぞって最新型のホールを作ろうとする今のトレンドにノーを突きつけたかったのだという。
今年32回目を迎えるこのフェスティバルは「ダボスフェスティバル」と呼ばれ、世界中の優秀な若手演奏家80人をダボスに招待。さまざまな演奏プログラムを披露する。
また、ドイツ出身の作曲家でピアニストのマックス・リヒターさんが週末に自身のアルバム「Sleep」のオールナイトコンサートをチューリヒ近郊で開催。8時間にわたるコンサートで、聴衆は「夢のベッド」に横になり演奏を楽しんだ。同コンサートは過去にロンドンやベルリン、マドリッドなどでも開かれている。
(英語からの翻訳・宇田薫)
(英語からの翻訳・宇田薫)
続きを読む
おすすめの記事
クラシック愛好家、楽団の「仮住まい」に不服 定期会員2割退会
このコンテンツが公開されたのは、
世界トップクラスのチューリヒ・トーンハレ管弦楽団が本拠とするコンサートホール「チューリヒ・トーンハレ」が改装中だ。このため団員は「仮住まい」に追いやられ、管弦楽団の定期会員の2割が退会した。
もっと読む クラシック愛好家、楽団の「仮住まい」に不服 定期会員2割退会
おすすめの記事
モントルー・ジャズフェスティバル これまでの枠から飛び出す!
このコンテンツが公開されたのは、
6月30日から7月15日まで、第51回モントルー・ジャズフェスティバルがスイスのレマン湖畔で開催される。今年は、ジャズの領域を大幅に越え、モントルーという場所にもこだわらず、さらに音楽の多様性を創作するといった「これまでの枠から飛び出す」フェスティバルとなる。演奏ジャンルはジャズだけでなく、ロック、ポップ、テクノ、クラシックにまで広がるーー。そんな音楽祭はもはや「モントルー・ジャズ」とは呼べない?それとも、それこそが「自由な」ジャズ理論に沿ったものなのだろうか?
「中身が濃くて強烈で美しいものが満載!」と同フェスティバルのディレクターであるマシュー・ジャトン氏が断言する今年のプログラムには、トム・ジョーンズ、アッシャー、ペット・ショップ・ボーイズ、ローリン・ヒル、グレイス・ジョーンズ、エリカ・バドゥ、フェニックスといった豪華な出演者の名前がラインアップ。スイス国内では、チューリヒのデュオ、ディーター・メイヤーとボリス・ブランクによる1980年代のエレクトロ・ポップグループのYello(イエロー)が初登場することも注目を浴びている。
ジャンルごとにプログラムを見ると、ジャズだけでなく、ポップ、テクノ、ロックも目立つ。もはやジャズフェスティバルではないという批判的な意見も聞かれる。
ジャズはたった2割
3月30日に公開されたプログラムには、ジャズのみだった創設時の1967年とは異なり、様々なジャンルのアーティストが幅広くセレクトされている。元来の伝統を発展させ「モントルー・ジャズ」というブランドを拡大させた音楽イベントは、今ではジャズがたった2割を占める。
モントルー以外の場所でもコンサート
広報担当のマーク・ゼンドリニ氏は、「ジャズにこだわらずバラエティーに富む今年のプログラムは、モントルー以外の歴史ある瞑想的な場所でも開催するのが特徴」と言う。それは、ジャズ本来の自由な発想に起因した「型にはまらない幅広いエンターテイメント」だという。モントルーという本来の会場に限らず、バイロンの叙事詩で知られるシヨン城や、サン・モーリスにある1500年以上の歴史を誇るスイス最古の修道院でも、バイオリンやパイプオルガンによるコンサートを行う。スイス人ジャズ・バイオリニストのトビアス・プライシクがエレクトロ・アコースティックを奏でるという。
今秋、恵比寿でモントルー・ジャズフェスティバル・ジャパンを主催する原田純一氏も、「スイスと同じスピリッツ」で、「ジャズという言葉を1個のキーワードにして、大人が楽しめる質の高い音楽を広げようと思っていて、カテゴリーに関係なく聴いて良いと思える音楽を、ジャズでないと言われても、ジャズフェスティバルという名前で出していこうと思っている」と語る。
そんな原田氏が個人的にお勧めする今年のライブは、ザ・シネマティック・オーケストラやシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズ。「大人が楽しめる洗練されたイベント」を目指す日本でのフェスティバルにも彼らを招きたいとの期待を込める。
もっと読む モントルー・ジャズフェスティバル これまでの枠から飛び出す!
おすすめの記事
国連オーケストラ、美しい音楽を奏でる人道支援活動
このコンテンツが公開されたのは、
昼間は世界の結核撲滅のために世界保健機関(WHO)で活動し、夜はオーケストラでチェロを演奏 ― そんな二つの顔を持つ医師がいる。彼は、国連の職員などで結成する国連オーケストラの一員だ。
クリスチアン・リーンハルト医師がWHOの伝染病学者としてインド、エチオピア、ベトナム、そのほかの結核リスクの高い地域に行くときは、チェロを持参することはない。
だが、新しい治療法を試すハードなフィールドワークを終えて夕方ホテルに戻れば、ノートパソコンを開いてイヤホンをつけ、楽譜をめくりながらオーケストラの楽曲を聞くこともある。国連オーケストラの団員であるリーンハルトさんの、次のコンサートに備えた練習のやり方だ。
もっと読む 国連オーケストラ、美しい音楽を奏でる人道支援活動
おすすめの記事
隈研吾の「ArtLab」のカフェで、モントルー・ジャズ・フェスティバルを再体験
このコンテンツが公開されたのは、
「ダー、ダー、ダーーー、ダー、ダー、ダ、ダーーー…」。ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の有名なリフレインが、スイスの大学のキャンパスで「ライブ」体験できるようになった。この曲だけではない。ジャズ、ブルース、ロックを含むモントルー・ジャズ・フェスティバルの歴史的アーカイブの大部分も楽しめる。
もっと読む 隈研吾の「ArtLab」のカフェで、モントルー・ジャズ・フェスティバルを再体験
おすすめの記事
スイス人と日本人デュオ、スイスの名曲をカバー
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで名の知れた音楽家マニ・マッターの生誕80年を記念して先月2日、スイスで活躍する若手アーティストたちによる、マッターの名曲カバー・アルバムが発売された。その中に収められた20曲のうちの1曲は、スイス人と日本人エレクトロ・ポップ・デュオ「ティム&プーマミミ(Tim & Puma Mimi)」が日本語でカバーしている。その2人に、初の日本版マッターが誕生するまでのストーリーを聞いた。
今回発売されたマニ・マッターの名曲が収められたカバー・アルバム「Und so blybt no sys Lied(彼の曲はこうしてまだ残っている)」に収録された20曲の中の「Ds Lotti schilet (Yorime no Lotti)」を歌うのは、チューリヒを拠点にヨーロッパ各地で活躍するエレクトロ・ポップ・デュオのティム&プーマミミ。スイス人のティムさんがサウンドを担当し、日本人でボーカルのプーマミミさんが歌うこの曲は、アルバムの中で唯一、外国語でカバーされた曲だ。
もっと読む スイス人と日本人デュオ、スイスの名曲をカバー
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。