言語教育戦争 妥協案が成立
多言語国家スイスは連邦制のため言語教育も各州によって違う。ここ数年、小学校から英語教育を優先したいチューリヒなどのドイツ語圏とドイツ語を必須とするフランス語圏との間で「どの外国語を先に習うか?」の論争が続いていた。
この度、国内の言語教育の統一を図ろうとする州教育委員会代表会議(EDK/CDIP)は小学校で二ヶ国語の外国語の導入を決定。これにより、国語(独、仏、伊、ロマン主語)を一言語、さらに英語を含めたもう一言語を取得することになった。また、先に始める言語については各州の自由として妥協案が成立した。
英語優先のドイツ語圏
この決定を受けて、ドイツ語圏のほとんどの州では、今まで通りフランス語は5年生から、一方、英語は3年生で導入することになる。しかし、ベルン、バーゼルなど言語国境に近い州ではフランス語導入を優先する予定。この2外国語を小学校で導入する方針は2012年までに義務化される。
ドイツ語を免れない少数派
フランス語圏では既に3年生からドイツ語習得が導入されているのであまり変化はない。ティッチーノなどのイタリア語圏でも既にドイツ語とフランス語は小学校で必須だ。スイスの言語別人口比はドイツ語が63、7%、フランス語が20,4%でイタリア語が6,5%で少数派の言語圏は就職などのため、ドイツ語は欠かせない。
フランス語圏の反応
州教育委員会代表会議(EDK/CDIP)の決定に対し、言語少数派であるフランス語圏(約20%)の反応はもちろん厳しい。「ルタン」紙(4月1日付け)は「スイスで英語が第一外国語に」という見出しで取り上げた。また、トリビューン・ド・ジュネーブ紙(4月1日付け)では「ロマンド地方の怒り」と題して文部省ロマンド地方代表、マリオ・アノニ氏のコメント「もし、フランス語を中学でしか始めない事になったら、この国の少数派の文化にとって打撃となり、スイスの特性を無視することになる」と載せている。同アノニ氏は「CDIPの勧告が国語の優先を義務にしないのが残念だ」と批判。さらに「スイスのような多言語国家は国語が最重要な外国語として扱われるべきだ」と強調した。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
これまでは小学校で教える外国語は一言語だったが、2012年までに2つの外国語を教えることに決定した。
まず、第一外国語は3年生に、第二外国語は5年生に導入する予定。
二つの言語のうち、一つは国語(スイスの4つの公用語)、もう一つは英語になる州が多くなる。
各カントン(州)は先に導入する第一外国語が英語か国語かを選ぶことができる。
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