新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は「ニューノーマル」になり、2年連続で世界中のイベントや市民生活がコロナの影響を受けた。スイスの漫画家は今年も、そのアイデアに事欠かなかったようだ。風刺画で1年を振り返る。
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ベルン大学で歴史学と政治学を学ぶ。通信社ロイター、日刊紙ブント、ベルナー・ツァイトゥング、ラジオ・フェルダーバントを経て現在に至る。関心テーマはスイスで実践される現代の直接民主制。スイスの直接民主制をあらゆる面、あらゆるレベルから取材する。常に市民を記事の中心に据える。
Renat Kuenzi, Ester Unterfinger
パンデミックから2年近く経った。私たちにちょっとした笑顔をもたらしてくれる漫画家の存在は実にありがたい。もちろん、ただ素晴らしい作品を見せてくれるだけでもありがたい。
例えばチューリヒ出身の漫画家シュテファン・リュトルフがそうだ。リュトルフは、この2年間を5つのモチーフで表した。2020年は4つ、2021年は1つだ。
2021年のモチーフであるワクチンの注射器は、本来は希望を象徴する意図だったのに、結果的には恐怖と狂気を表すものとなった。この希望の象徴は既に1年前からあったが、まだ日の目を見ていない。それは私たちが今まさに経験している。
先行きは不透明
それどころか、パンデミックからエンデミックへの移行は、2022年になってもまだ先のようだ。スイスでは他の多くの国と同様、12月中旬の時点で3分の2弱しかワクチン接種を済ませていない。
しかし、他の作家らも素晴らしいアイデアを持ち、同じように素晴らしい仕事をした。マルコ・ラッチラーは、ワクチンの話題がいかに人間関係を壊すかを、バスルームでの男性カップルの親密なシーンで表現した。
2021年12月17日から2022年2月13日まで、ベルンのコミュニケーションミュージアム(通信博物館)で、スイスの報道風刺漫画家の作品で1年を振り返る「GEZEICHNET 2021」展が開かれている。50人超の作家が風刺画200点以上を出品。swissinfo.chはその一部を写真ギャラリーで紹介する。
もちろん、パンデミックイヤーの2021年には明るい話題もあり、スポーツはその絶好の舞台となった。延期の末開催されたサッカーのユーロ2020(欧州選手権)で、スイス代表は自国のみならずサッカー界全体を沸き立たせた。世界王者フランスに歴史的な勝利を収めた上、準々決勝では元世界王者のスペインに敗れこそしたものの、PK戦まで粘ったからだ。
マックス・シュプリングはここで、動物界ではおなじみの表現を使うチャンスを逃さなかった。彼の作品はピッチ上での熾烈なせめぎあいを、スポーツ欄の見出しよりもうまく表している。
風刺画、政治画、漫画。呼び名はそれぞれニュアンスの違いに過ぎない。私たちが紹介する写真ギャラリーの風刺画が魅力的なのは、どんなに困難な状況にあっても生活に明るさをもたらしてくれるからだ。
それだけではない。風刺画は、私たちの世界観に新鮮味や着眼点をもたらしてくれる。世界をどう解釈し、理解しようとする私たちの試みに、だ。例えばどうやって?それはモラルを振りかざすのでも、講釈を垂れるのでもない。欲望と好奇心を生み出すシンプルさと先鋭さが、私たちをそうさせるのだ。
(独語からの翻訳・宇田薫)
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