ミニゴルフの成功に貢献したスイス
ミニゴルフが誕生したのは20世紀ではない。実はこのスポーツが今日のような形になるまでには長い道のりがある。その発展にはジュネーブの建築家、ポール・ボングニも重要な役割を果たした。
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1860年代、ゴルフは上流階級の男性に人気のスポーツだった。ゴルフクラブをフルスイングするのは、当時の風紀ではその他の多くのスポーツがそうであったように、あまり女性らしくないと考えられていた。
しかし、スコットランドの町、セント・アンドリュースの若い女性たちはこれに辟易し、バドミントンかクリケットしかできないことを嘆いていた。彼女たちの心を躍らせていたのは、他ならないゴルフだった。
そこで町のゴルフクラブの支配人、オールド・トム・モリス外部リンクは、人目に付かない場所に9ホールの小さなパッティングコースを作るというアイデアを思い付いた。その場所は定期的に浸水し、地元の漁師たちが近くの海に行くために通る小道が横切っていたため理想には程遠かったが、これが最初の一歩になった。
オールド・トム・モリス(1821~1908年)は史上初のプロゴルファーの1人であり、存命中からすでに伝説的な存在だった。類まれな才能に恵まれたプレーヤーだっただけではなく、ゴルフというスポーツを発展させた。
新しいゴルフ場をいくつもオープンし、クラブ(パター)やゴルフボールを設計した。また、ショットの精度を高めるためにグリーンを砂で固めることなども彼の考案だ。そして尊敬と賞賛を集めるこのプロゴルファーの主導のもと、1867年、セント・アンドリュースに初の女性ゴルフクラブが誕生した。
ミニチュア版のゴルフコースに話を戻すと、このアイデアもまたスコットランドの小さな町を超えて広がりつつあった。通常18ホールのゴルフコースは50~90haの土地が必要であるのに対し、9ホールのミニコースは約5haでいい。スペースの他に経済的な問題もある。高い維持費がかかることも、このスポーツがもともと上流階級に限定されていた主な理由だった。
そうした障害にもかかわらず、収入や社会的地位がより低い人たちも含め、この新しいスポーツに参加したいと思う人が増えていった。
20世紀半ばには限られたスペースでゴルフを楽しもうとする試みが生まれ、牧草地や田園地帯にシャベルで穴を掘り、ホールがあるだけのゴルフコースが作られた。これをゴルフと呼ぶのはいささか大げさかもしれないが。
だがシャベルやツルハシで緑地を開拓しても、スペースの問題が解決できるわけではない。別の解決策が必要だった。
最終的に現在のようなミニゴルフのコースを考案したのは、英国人のジェームズ・ウェルズ・バーバーだった。米国に移住したバーバーは、1916年、来客の娯楽用として自宅敷地内に小さなゴルフコースを作った。アマチュア建築家と造園家の協力を得て設計され、豪華な花壇や歩道、噴水などで装飾されたコースは、ミニゴルフ場というよりもバロック式庭園のようだった。
それから数十年の間に米国や欧州で多くのミニゴルフコースが誕生したが、その形状や地形、障害物やプレーのスタイルはどれも大きく異なっていた。中にはゴルフとクリケットを組み合わせた「コビゴルフ」のような、混合コースもあった。
▼1930年代のミニゴルフ映像
20世紀半ば、ジュネーブに住むティチーノ出身の建築家・造園家のポール・ボングニはこう考えた。「こんなにうまく行っているのに、途中でやめるわけにはいかない」。ボングニは他の愛好家たちと協力して、悪天候にも影響を受けにくく、衣服も靴も汚れないゴルフコースを設計し、規格化した。1951年11月には特許を申請し、2年後に当局から認可された。こうして1954年3月19日、ティチーノ州アスコーナに長さ12m、幅1.25mのコンクリート製の17のコースから成る、規格化された最初のミニゴルフコースが誕生した。
ボングニはこのスタイルのミニゴルフを考案するだけに飽き足らず、明確に定めた規格サイズと基準に沿って設置・使用されるコースだけに認められる、「ミニゴルフ」という呼称の保護にも注力した。その後ミニゴルフが成功したのは、結果的にはコースを規格化し統一したことによるところが大きい。
1954年末、スイス国内にはすでに18のミニゴルフコースがあり、そのブームは国境を越えて広がった。
ちなみに、「ミニゴルフの母国」と呼ばれるスイスは、1991年にノルウェーで開催された第1回ミニゴルフ世界選手権で、4種目中3種目で優勝した。スイスがタイトルを逃したのは女子団体戦だけだった。
ニーダーヴェニンゲン出身。歴史専門のフリージャーナリスト、コラムニスト
記事原文外部リンクはスイス国立博物館のブログ
仏語からの翻訳 :由比かおり 校正:大野瑠衣子
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