50年前に人類が初めて月に降り立った瞬間は、スイス文化にも大きな足跡を残した。
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1969年7月21日の月面着陸は、テレビ時代が幕を開けたスイスでも大きな注目を浴びた。その瞬間を見るために多くの人がテレビを買い求め、テレビ画面の前でカメラを構える外部リンク月マニアもいた。
子供達は夜を徹してその瞬間を待っていた。街中ではテレビのあるレストランが夜通し営業した。兵舎にいる兵士たちですら、テレビを見ることが許可された。人々がかたずを飲んで見守る中、ザーザーというノイズの後に朝3時56分、ニール・アームストロングが月に降り立ちこう述べた。「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」
月面着陸が芸術に与えた影響
スイス人芸術家のマックス・グリューター外部リンク氏は当時13歳だったが、今でもその瞬間のことを鮮明に覚えている。身の周りに「技術的なものはほとんどない」ような田舎暮らしで、ロシア人宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンに憧れたり、スプートニク号のような宇宙船が見えないものかと空を見上げたりしていた。1969年のその日は家族と共にテレビを囲み、「何が映っているのか分からないようなテレビ画面」を食い入るように見つめた。1990年代以降、グリューター氏は宇宙飛行士や宇宙技術をコンピューターグラフィックで描くことに取り組んでいる。彼にとって、こうしたモチーフは人類による未知なるものへの挑戦を象徴する。
スイス宇宙博物館の夢
スイス人アートメディエーターのグイド・シュヴァルツ氏は今年、月面着陸50周年を記念する展覧会外部リンクやイベントをいくつか企画している。長年の夢であるスイス航空博物館の設立という目標が背景にある。
月面着陸の時4歳だったシュヴァルツ氏を両親は起こしてくれず、「今でも根に持っている」。以来、宇宙に取りつかれ、「二人の兄と共有する子供部屋の壁は、宇宙飛行士のポスターでいっぱいだった。高さ1.5メートルのロケット模型もあった」。見逃した月面着陸の瞬間を、仮想現実(VR)ゴーグルで何度も繰り返し眺めた。
ロケットアイス
人類の偉大なる一歩を思い出させる最大の記念碑は、小さくて冷たく、パイナップルやオレンジの味がする。それは月面着陸に着想を得て、アイスメーカー、ロールシャッハがその数週間後に発売したロケット型のアイス、その名も「Raketenglacé」―ロケットアイスだ。当時の価格は0.30フラン。今はネスレ傘下のフリスコが生産し、危機にあった会社経営を救った。同社の別のアイスはことごとく不発に終わったが、ロケットアイスだけは毎年約800万本、過去50年で延べ4億本が売れている。
ロケットアイス自身も、値ごろでロングセラーな子供の大好物としてさまざまな商品のモチーフに採用されている。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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