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氷河で見つけた落とし物

数十年前のスキーストックのリング、ユダヤ教のシンボルが刻印されたビンのかけら、ヤギに似た動物「シャモア」の死体…。ベルンの写真家ダミアン・ポフェットさんは、こうした遺物を氷河ツアーで見つけ、フィルムに収めてきた。彼の写真は、人と自然のはかなさを伝える。

氷河にあった「落とし物」を持って帰るのに大変なこともあった。竹でできたスキー板の場合、リュックザックに入るように割った。こうして何年もツアーで物を拾っていくうちに、結構な量がたまった。

ポフェットさんを引き付けるのは、その物自体だけではなく、それが持つ過去だ。「手つかずの自然に足跡を残したのは誰か。氷河に保存されキズのついた、ライカのレンズキャップの持ち主はどんな人だったのか。スキー板やストックが木や皮でできていた時代、ここにあえて来ようとした冒険家が落とした物は、ストックだけだったのだろうか。それとも、自分の命までも氷河に落としてしまったのだろうか。」

落とし物を手掛かりに、こうしたなぞを解くことは難しい。しかし、ポフェットさんの写真を見た人それぞれが、落とし物が持つ過去に想像力を膨らませる。

(写真:ダミアン・ポフェット、文:ペーター・ジーゲンターラー)

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