カンクンから未来へ続く道
太陽光を利用したスイス製の電気自動車と船が、エネルギー効率の向上を訴えるために世界を旅行中だ。国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議 を開催中のカンクンは、絶対に外せない訪問地だ。
世界一周の旅「ゼロ・レース」を敢行中の電気自動車が、旅行開始から71日目の12月7日に、会議場のホテルの前に到着した。会場内にはすでにスイス製のソーラーボートが展示されている。
「これが未来だ」
電気自動車は、国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議 ( COP16 ) のリーダー「国連開発計画 ( UNEP ) 」の応援を受けてホテル前に到着した。UNEPの広報部長サティンダー・ビンドラ氏は、この日を「非常に重要な日」と宣言し
「これらの車はカンクン ( Cancun ) の交渉テーブルに非常に重要なメッセージを運んできました。車を開発した先駆者と起業家は、( 気候変動問題を解決するための ) 技術と方策がここにあることを証明したのです。現在必要なものは、これらの解決策を実行するための政治的意思です」
と語った。
電気自動車による「ゼロ・レース」を組織したスイス人ルイ・パルマー氏は、自身の思い描く全体図を説明する。
「再生可能なエネルギーで動く電動式の乗り物、これが未来です」
レースに使用される2台の車と1台のオートバイは、行く先々で注目を集めたと言う。パルマー氏は、昨年ソーラータクシーで世界を一周した数学教師だ。
「これらの電気自動車を見た人はみんな『これが未来だ』と言います。1回の充電で最高250キロメートルも走れることを伝えると驚嘆します」
カンクンでレースを開催するに当たって、パルマー氏もまた会議へのメッセージを携えている。
「何が決定されようと、( 問題解決のための ) 技術はここに存在します。これは未来の技術です。会議に出席する各国代表者が一緒にここに来て、わたしたちの地球を守るための決定をしてくれるよう願っています」
目で見ることのできる証明
一方、世界最大のソーラーボート「トゥラノー・プラネットソーラー号 ( Turanor PlanetSolar) 」は、モナコを出発し、大西洋横断を開始してから61日目にカンクンの北、マリナ・ラ・アマダ ( Marina La Amada ) へ到着した。このカタマラン ( 双胴船 ) は12月8日に行われた会議の会場で披露された。
ハイテクを駆使したトゥラノー・プラネットソーラー号は、太陽エネルギーのみを使用する電気エンジンで作動する。製造には約1250万ユーロ ( 約13億8600万円 ) が投入され、スイス外務省 ( EDA/DFAE ) がその一部を負担した。
この計画を立ち上げたスイス人ラファエル・ドンジャン氏は
「乗組員は、強い潮流と逆風、ここ数週間で早くなった日没の中を航海してきたので、到着を非常に喜んでいます」
と語った。
乗組員にとってソーラーボートの展示は、気候改善のために開発された太陽光エネルギー技術を有効かつ先進的に利用してみせた「目で見ることのできる証明」と言える。
技術の活用
国連開発計画はゼロ・レースを讃える一方、車の数と二酸化炭素 ( CO2 ) 排出量の増加への対策を早急に見つける必要があると述べる。さらに、電気自動車の技術を活用し、クリーンなエネルギーの開発を推進するインセンティブ ( 報奨金 ) が必要とも指摘する。
世界のCO2の総排出量の4分の1は、運輸部門から発生したものだが、国連開発計画は、2050年までにこの数字が3分の1に上昇すると推計する。また、今後40年間で世界中の車の数は3倍に増え、その80%が途上国における増加になると推計する。
カンクンでは、エネルギーの効率についての協議にかなりの時間が割かれた。メキシコのエネルギー省は、12月8日に「エネルギーの効率:好機をとらえる」と題した公開討論会を開催し、世界銀行の総裁ロバート・ゼーリック氏、スペイン、デンマーク、オーストラリア、南アフリカなど世界各国の環境大臣が出席した。
消えていく車
副次的なイベントとして「国際エネルギー機構 ( IEA ) 」 が、電力供給についての最近の調査結果を発表し、エネルギーの使用から発生するCO2の世界的な削減に向けて今後数十年間は、政策と技術を調和させた野心的な取り組みが必要だと満場の聴衆に訴えた。
国際エネルギー機構は、運輸関連から発生するCO2排出量の増加傾向を逆行させるのは可能と考えている。主に電気自動車や、プラグインハイブリッド車など、より効率の良い高度な技術の車へ移行することによって、2050年までに化石燃料の使用を今日よりはるか下のレベルへ引き下げが可能になると主張した。
しかし、主要先進諸国がリーダーシップを発揮しなければならないとも言及している。国際エネルギー機構の事務局長の田中伸男氏は、各国にはそれぞれこなさなければならない課題があると言う。コペンハーゲンで開催されたCOP15では、今世紀半ばまで世界の平均気温の許容上昇温度は摂氏2度未満と提案された。それを達成するためには、2050年までに世界最大のCO2排出国である中国が、販売車両の総数の半分を電気自動車とプラグインハイブリッド車に置き換えなければならない。
田中氏は、現在一般的に使用されている車の行く末について
「燃焼エンジンの車は消えていくでしょう。本当に必要とされているのはこうした新しい技術の車なのです」
と語った。
さらに、CO2排出に関する世界的な目標の達成について
「非常に困難ですが、やりがいのある挑戦です。カンクン会議は、低炭素技術の開発などに特別の優先順位を与えることによって達成を後押ししています」
と説明した。
消えていく車
副次的なイベントとして「国際エネルギー機構 ( IEA ) 」 が、電力供給についての最近の調査結果を発表し、エネルギーの使用から発生するCO2の世界的な削減に向けて今後数十年間は、政策と技術を調和させた野心的な取り組みが必要だと満場の聴衆に訴えた。
国際エネルギー機構は、運輸関連から発生するCO2排出量の増加傾向を逆行させるのは可能と考えている。主に電気自動車や、プラグインハイブリッド車など、より効率の良い高度な技術の車へ移行することによって、2050年までに化石燃料の使用を今日よりはるか下のレベルへ引き下げが可能になると主張した。
しかし、主要先進諸国がリーダーシップを発揮しなければならないとも言及している。国際エネルギー機構の事務局長の田中伸男氏は、各国にはそれぞれこなさなければならない課題があると言う。コペンハーゲンで開催されたCOP15では、今世紀半ばまで世界の平均気温の許容上昇温度は摂氏2度未満と提案された。それを達成するためには、2050年までに世界最大のCO2排出国である中国が、販売車両の総数の半分を電気自動車とプラグインハイブリッド車に置き換えなければならない。
田中氏は、現在一般的に使用されている車の行く末について
「燃焼エンジンの車は消えていくでしょう。本当に必要とされているのはこうした新しい技術の車なのです」
と語った。
さらに、CO2排出に関する世界的な目標の達成について
「非常に困難ですが、やりがいのある挑戦です。カンクン会議は、低炭素技術の開発などに特別の優先順位を与えることによって達成を後押ししています」
と説明した。
2010年11月29日~12月10日にメキシコのカンクン ( Cancun ) で開催されている。 気候変動に関する交渉プロセスは、「国連気候変動枠組み条約 ( UNFCCC ) 」 の締約国によるセッションを中心に展開する。COPは毎年開かれ、条約の履行具合を再検討する。 COP16では、気候変動への適応、温室効果ガスの排出削減、資金問題、京都議定書の今後などが話し合われる。
電気自動車とプラグインハイブリッド車の製造コストは、今後5~10年の間は、同じサイズの燃焼エンジンの車の製造コストを実質的に上回り続けると予測される。
燃料電池の製造コストを大幅に下げるためには、新しい技術の商品化が必要となる。
「国際エネルギー機構 ( IEA ) 」 によると、近い将来燃料電池の製造コストは約600 ドル ( 約5万円 ) /キロワット時 ( kWh ) になる。これは、30/kWhの車1台の燃料電池の製造だけで1万8000~2万4000ドル ( 約151万~202万円 ) もかかることになる。しかし、2015~2020年ごろまでに目標の300ドル ( 約2万5000円 ) /kWhを達成できると期待されている。
( 出典:国際エネルギー機構 )
目標販売台数 / 1台当たりの報奨金
中国:
2011年末までに50万台
8800 ドル ( 約74万円 )
フランス:
2020年までに最高200万台、政府公用車5万台
6300 ドル ( 約53万円 ) の税額控除
日本:
2020 年までに100万台
1万4000 ドル ( 約117万円 )
ドイツ:
2020年までに100万台
未定
アメリカ:
2015年までに100万台
7500ドル ( 約63万円 )
( 出典:国際エネルギー機構 )
( 英語からの翻訳 笠原浩美 )
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