アルプスの住みかを気に入った大型のネコ
スイスで1900年代、乱獲により一時絶滅したオオヤマネコが、政府の繁殖政策などにより現在は300頭まで持ち直した。

スイスでのジャーナリストとしての経験が豊富で、さまざまなテーマのビデオ、記事、ポッドキャストを制作。最近は主に政治と環境に焦点を当てている。 英国生まれのビデオジャーナリスト。ノッティンガム大学で法律を学び、ロンドンで初の大学院ラジオ・ジャーナリズム・カレッジに進学。1984年から1995年までイギリスとスイスでラジオ・ジャーナリストとして働き、ボーンマス・フィルム・スクールで映画の大学院ディプロマを取得。

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1971年、政府は東欧のカルパティア山脈に生息していたオオヤマネコのオスとメスを2頭ずつ輸入し、スイス中央部オプヴァルデン準州の森に放した。大きな斑点模様と耳に黒い飾り毛のあるこの大型のネコたちは、新しい住みかを気に入り子作りを始めた。個体数は現在約300頭まで増え、生息分布もスイス各地に広がる。スイスはいま、野生のオオヤマネコの保全に乗り出した国々に対し、個体を提供している。
オオヤマネコは3、4月の繁殖期を除き、単独で行動する。縄張り意識が強く、メスで50~150平方キロメートル、オスで100~250平方キロメートル。出産時期は5月下旬から6月前半で、通常2匹の子供を生む。子供たちは10カ月間、母親と行動を共にする。
スイスにある肉食動物および野生動物の保護管理団体「KORA」によると、国内に生息するオオヤマネコのエサの88%はノロジカとシャモア(アルプスカモシカ)。KORAは「大人の個体だと1週間につきシカかシャモア1頭分が必要。年間では約50~60頭に上る」と説明する。
人間と野生動物の衝突
オオヤマネコは人に飼育されている羊を襲うことがあるため、一部の農家からは敬遠されている。山間部のヴァレー(ヴァリス)州では、肉食動物の排除運動が起きているほどだ。ここで主にターゲットにされているのはオオカミだ。
しかし、ベルン大学保全生物学学科のラファエル・アルレタス教授は、オオカミやオオヤマネコには自然界での役割があると指摘する。同教授は「肉食動物は単なる捕食者ではない。生物多様性の観点から見れば、例えば草食動物を捕食することでその個体数をコントロールしているというポジティブな見方も出来る」と話す。
ヴァレー州フレン村で羊を飼育しているヘドウィック・ツーバーさんは、オオカミの駆除には賛成だが、オオヤマネコには比較的寛容な立場だ。ツーバーさんは「(オオヤマネコなら)オーケーだ。動物を1頭殺せば、その後はしばらく何もしないから」と話す。スイスの農家は家畜がオオヤマネコやオオカミによる被害を受けたと証明できれば、政府の補償を受けられる。
オオヤマネコはヨーロッパの野生生物と自然生息地の保全に関する条約(ベルン条約)で保護されている。
(SRF/swissinfo.ch/jh)
体重:17~26キロ
食物:主にシカやシャモア。ウサギ、キツネ、家畜を食べることも
生息地:主に北西アルプス、ジュラ地方
保全状況:軽度懸念
個体数:300
(英語からの翻訳・宇田薫)
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