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小国スイスはCO₂排出大国

整然とした街並み、リサイクル上手、快適な鉄道の旅。スイスは美しい大自然に囲まれた、清潔で健全な国として名高い。しかし、スイスの高い生活の質(QOL)には負の側面がある。スイスのエコロジカル・フットプリントをつり上げる大量消費と利便性だ。スイスの二酸化炭素(CO₂)排出量を増加させている主な要因を見てみよう。

地球の使い過ぎ

環境団体のグローバル・フットプリント・ネットワーク外部リンクによると、今年の「アース・オーバーシュート・デー(1年間に地球が生産できる自然資源の量を人間が使い尽くしてしまう日)」は7月末だ。もし、世界中の人々がスイス人のように暮らすと、その日は5月初旬外部リンクになる。また、そのために十分な自然資源を供給するには地球が3つ必要だ。

スイス連邦環境局のカリーネ・ジークヴァルト副局長は、近年の報告書の中で、「スイスは消費水準が比較的高く、1人当たりのエコロジカル・フットプリントが極めて高い国の1つだ」と記した。

スイスのフットプリントを押し上げる要素の1つは輸入品だ。輸入品の排出量を算入すると、スイス国民1人当たりの年間CO₂排出量は14トンに上り、世界平均の6トンを大きく上回る。

マッキンゼーが2022年7月に公表した調査外部リンクによると、世界の炭素排出量の2~3%がスイスから出ている。インドネシアや日本、ブラジルと並ぶ規模だ。

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スイスのCO2対策は「落第点」だが国際比較では「良」

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スイス住民は、1人当たりのごみの量が、ほとんどの欧州諸国の住民よりも多い。

「私たちの社会にはびこる身勝手さが、ごみとその捨て方に表れている。使い捨て社会の証拠だ」と、ベルンのフォルストハウスごみ処理・発電所でツアーガイドを務めるアンディ・ヴェレンさんは指摘する。同発電所では、木、天然ガス、ごみを使って電力や熱を生み出す。

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スイスのごみとリサイクル事情

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飲料容器などのごみをリサイクルできる仕組みが整っていても、プラスチック容器の多くはリサイクルが難しいか、リサイクルができない。リサイクル施設は地方や州によって異なるうえ、一般的に家庭ごみの処理料はリサイクルへの意欲がそがれるほど安い。

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世界のセメント生産が排出する温室効果ガスは、航空交通より多い。スイスはセメント消費量が最も多い国の1つだ。スイスは建設業界の環境負荷を軽減すべく、新たなセメントを開発した。

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CO2大量排出のセメント産業、環境負荷を減らせるか

このコンテンツが公開されたのは、 世界のセメント生産が排出する温室効果ガスは、航空交通より多い。スイスはセメント消費量が最も多い国の1つだ。そんなスイスで開発された新しいセメントが、建設業界の環境負荷を軽減できるかもしれない。

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欧州各国が相次ぎ使い捨てプラスチック製品の使用を法律で禁止しているが、スイスでは違法化する予定はない。一部のスイス大手小売業者が自主的にプラスチックのストローや食器の販売・提供を取りやめている。

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使い捨てプラ製品、スイスは独自に対策

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移動手段

スイスには鉄道網が張り巡らされている。年間の鉄道利用回数と利用距離において、スイスは世界チャンピオンだ。

その一方で、通勤には車がまだ広く利用されている。通勤者の半数以上は、公共交通機関、自転車、徒歩ではなく、車で通勤する。バス、業務用車両、運搬車両などの道路輸送がスイスのCO₂排出量の約40%を占める。

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いくつかの車とトラックが、ヴォー州のエクブランズクリシエ高速道路インターチェンジを運転しています。大きな幹線高速道路が3本交差している。

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交通

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは、電車やバス、路面電車が全土を広く網羅し、車がなくてもスイスを回ることが出来る。

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新型コロナウイルスの世界的流行が始まる前、スイス人が飛行機で移動する年間の平均距離は約9千キロで、20年前と比べて2倍に膨らんだ。飛行機の利用者は近年、増加傾向にある。コロナ前の航空輸送はスイスのCO₂排出量の約10%を占め、世界全体の2.5%を大きく上回る。

スイスが世界平均よりも数カ月早く ―7月や8月ではなく、5月に― アース・オーバーシュート・デーを迎えたことを受けて、世界自然保護基金(WWF)は声明の中で、「平均して、スイス人は欧州市民の3倍の頻度で飛行機を利用し、欧州で最も大型の自動車に乗り、世界で最も多くのごみを出す」と述べた。

しかし、空の旅を抑制しようとする世論の圧力は高まっている。航空券に炭素税をかけるべきかという議論はその1つだ。短時間での移動への言い訳として格安航空券を利用する人々を思いとどまらせるため、航空運賃自体を高くすべきだと主張する人もいる。

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航空需要の急回復 CO₂対策は出遅れ

このコンテンツが公開されたのは、 パンデミック(世界的大流行)で2年にわたる制限を受けた空の便は、需要が急拡大している。航空交通による二酸化炭素(CO₂)排出量が急増し、スイスの環境目標が達成できなくなるとの懸念が出ている。

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myclimate外部リンクのようなサービスでは、環境汚染で罪悪感を感じる人を対象に、寄付によるCO₂排出量オフセット(相殺)の機会を提供している。

「飛行機で移動することは人権ではない」とmyclimateの最高経営責任者(CEO)であるシュテファン・ネフ氏は指摘する。「スイスや他の国々の人たちが慣れてしまった贅沢だ」

2050年までにゼロエミッション(温室効果ガス排出量ゼロ)を目指すスイス連邦政府は、運輸、建設、工業部門においてCO₂排出削減措置を講じている。しかし、連邦議会は昨年5月、コロナ危機で経営難に陥っているスイスインターナショナル・エアラインズ(SWISS)などの航空会社数社を支援するため、18億7500万フラン(約2040億円、昨年5月時点)の出資を承認した。

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スイスの温室効果ガス削減、2020年の目標達成困難に

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2021年6月の国民投票では、温室効果ガスの削減策を盛り込んだCO₂法の賛否が問われた。パリ協定の達成に向けた法改正だったが、有権者の51.6%が反対票を投じ否決された。

投票結果を受け、シモネッタ・ソマルーガ環境相は「この否決は波紋を起こす。気候目標の達成は難しくなるだろう」と語った。

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スイスの改正CO2法、僅差で否決 2021年6月国民投票

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住宅部門

スイスは他の欧州諸国よりも暖房用石油の使用量が多い一方で、熱損失では平均を上回る。1つの要因として、建物の多くが比較的古く、改装への投資には概して消極的であることが挙げられる。

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スイスで進まぬ住宅・建築物の省エネ化 完了は1世紀後か

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また、スイスの新築物件の多くが、郊外の一戸建てや二世帯住宅であることだ。中心部から離れた立地のせいで、住人は車での移動に頼ることが多い。

住宅建設ブームは企業投資家によるところが大きい。投資家は不動産市場がさらに活気づくと見込んでいる。だから、これらの物件の多くは今のところ空き家のままだ。その結果、建築資材は浪費され、緑地が失われている。

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誰も住まないアパート

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(英語からの翻訳・江藤真理)

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