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UBS、気候目標の達成を10年先送り 国際枠組みには残留

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Keystone / Michael Buholzer

UBSは脱炭素目標の達成時期を10年先送りした。買収したクレディ・スイス(CS)の取り組みの遅れを原因に挙げている。 

UBSは17日公表した持続可能性報告書外部リンクで、脱炭素目標の達成時期を当初の2025年から2035年に修正した。 

延期の理由として、2023年のCS買収により「不動産ポートフォリオ(資産配分)が拡大」したことを挙げた。UBSはかつて、買収に関連した不動産関連費用で4億ドル(約680億円)の損失を被ったと明かしている。 

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FT

英HSBCも2月、気候目標の達成時期をこれまでより20年遅い2050年に変更した。 

この動きは銀行に限らない。昨年11月にドナルド・トランプ氏が米大統領選を制して以来、多くの大企業が気候目標に向けた取り組みを見直している。 

この数カ月、米JPモルガンやゴールドマン・サックス、シティグループなど、ウォール街の金融機関数社が「ネットゼロ銀行同盟(NZBA)」から脱退した。(訳注:日本の三井住友フィナンシャル・グループ、野村ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループも離脱を表明済み) 

UBSは今のところNZBAに残っている。加盟行は産業革命以前の水準より地球温暖化を1.5℃に抑えるという全体目標に沿って各行の目標を設定しなければならない。 

だがNZBAは近く、この目標を見直し、気温上昇を2℃まで許容するかどうか、投票で決定する予定だ。 

UBSは報告書の中で、スイスの住宅・商業用不動産への住宅ローン融資による排出量削減目標は、「長期的な世界の平均気温が産業革命以前の水準から最大2℃上昇する可能性がある」というシナリオに基づいていると説明した。 

UBSはNZBAから離脱するのか? 

UBSのセルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は1月に開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、同行が米国の銀行に続いてNZBAを離脱するかどうかを検討していると明かした。 

エルモッティ氏はダボス会議で「世界中のあらゆる国・地域が同じペース、同じ程度で目標達成できると考えるのは難しい」 と発言した。

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UBSは今年の持続可能性報告書で、過去数年掲載していた「報酬プロセスにおける環境、社会、ガバナンスの目標」に関する節を削除した。同行は「上級管理職の報酬と特定の気候目標の間に直接的な関連はない」とも述べている。 

だが経営幹部は、非財務業績評価の一環として「環境と持続可能性」目標を掲げている。「環境と持続可能性に関連する顧客の活動の支援」もこの目標に盛り込まれている。 

UBSは、ネットゼロ目標の延期は「最新の規制指針」も反映していると述べた。 

UBSはCS統合の3カ年計画として、顧客の移行やITシステムの統合を進めている。統合作業は2026年の完了を見込む。 

UBSはコメントを控えた。 

Copyright The Financial Times Limited 2025

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