スイスの山岳地帯に生息するアルプスマーモット。丸々とした顔に二本足で立つ姿は観光客に人気で、マッターホルン登山の拠点のツェルマット村では、どこのキオスクにもマーモットの写真入り絵葉書が置いてある。いわばこの国のマスコット的存在だ。それだけではなく、脂肪は人間用の軟膏の原料になり、マーモットの肉を使った料理もある。
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マーモットはリス科の動物で、最大20匹の群れを作る。手の力が非常に強く、丈夫な爪で巣穴を掘る。繁殖ができるようになる3歳までは、両親や兄弟たちと暮らす。10月初旬から4月中旬まで冬眠し、その時期が近づくと体重は2倍に増える。
主にスイスアルプスやスイス北西部のジュラ地域に生息。登山鉄道駅近くの公園では、飼育されたマーモットを見ることができる。
マーモットは非常に警戒心が強く、危険を察知するとホイッスルのような警戒音を出して仲間に知らせる。音の長さにも意味があり、長いものは空からの危険(ワシなど)、短いものは陸からの危険(キツネなど)が迫っているというサインだ。
チューリヒのスイス国立博物館で開かれている特別展「スイスの動物寓話集外部リンク」(来年3月11日まで)では、マーモットを「スイスを象徴する4大動物」として紹介。ペットとして飼われたマーモットの記録のほか、マーモットの脂肪から作られた油や軟膏などの医薬品を展示している。油や軟膏は痛みや腫れ、湿疹を緩和する効果があり、スイス国内の薬局で広く販売されている。
狩猟シーズン
マーモットは狩猟の対象動物でもあり、一部のレストランではマーモットの肉を使った料理を出している。毎年9、10月の狩猟シーズンは、猟師たちがマーモットの個体数管理のため、数千匹を捕獲している。
それというのもツェルマット村などで最近、マーモットの増えすぎが問題になっているからだ。この村では、マーモットが人里に下り、民家の壁をかじったり農地に巣穴を掘るなどの被害が出ている。ツェルマット村の周辺には1千匹近くのマーモットが住んでいるとみられ、地元の観光局はマーモットの駆除と観光促進の折り合いをどうつけるか、対応に苦慮している。
マーモットの煮込み料理
スイスの無料夕刊紙ブリックは、マーモットの肉を使った煮込み料理を紹介。肉はウサギに近い味がするという。
マーモット
寿命 人間に飼育された場合で15~18年
体重 3~8キログラム。季節で異なる
体長 42~54センチメートル。尾の長さは13~20センチ
食べ物 木の根や葉っぱ、花、草など
生息地 山岳地帯、標高800~3200メートルの亜高山帯の牧草地
保全状況 軽度懸念
(英語からの翻訳・宇田薫)
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マーモットはリス科の動物で、危険が迫るとホイッスルのような警戒音を出す。スイスを訪れる観光客は、二本足で立つマーモットの愛らしい姿を好んで写真に収めていく。ツェルマットでは「マーモットの道」というハイキングコースがあるほか、どこのキオスクでもマーモットの写真つ
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スイスの山々では毎年5月から6月にかけて、野生のセイヨウスノキが花を咲かせる。その果実であるビルベリーは甘みがあり、鳥、キツネ、クマたちの大好物だ。
7月から8月に果実が成熟したあと、秋には見事な深紅色の葉をつける。商業目的で栽培されるものとは異なり、自生した果実の果汁は指や唇を青く染めるのが特徴的だ。野生種は鉄分、ポリフェノールの一種であるタンニン、そしてビタミンをより多く含有している。
生育に最も適しているのは酸性の砂質土壌で、樹は30~60センチの高さになる。森林や山の高木のない場所に生息し、ビルベリーはハイカーたちのおやつとして人気だ。ただ、キツネやライチョウなどの野生動物が食料としているため、自然保護区域内での収穫は禁止されている。
ヒグマもまた、ビルベリーを食べる。スイス人で野生動物の研究者、マリオ・テウスさんは2007年と08年、ゴミなどを漁ることから「問題クマ」グループにカテゴライズされていたクマ「JJ3」を調査。後日、日刊紙ブントに対しこう語った。「ある日、私はJJ3がゆったりと果実を摘み取っているのを見た。クマを敵対視する猟師の友人を私の観測ポイントに連れていき、その様子を見せたところ、友人は衝撃を受けていた。この一件で、彼のクマに対する見方が根底から覆えされた。JJ3は凶暴な野獣ではなく、アルプスに暮らす温和なヒグマとして彼の目に映ったのだ」。
それにも関わらず当局は2008年、JJ3の射殺を決定。環境保護活動家たちから批判を受けた。
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