バーゼルに世界中の海洋生物と淡水生物を集めた巨大水族館(Ozeanium、オツェアニウム)を建てる計画の是非が、19日の住民投票で問われる。賛成派は環境教育と自然保護に貢献すると主張するが、反対派は持続不可能なプロジェクトだと訴える。
このコンテンツが公開されたのは、
英公共放送BBCや英国各地の独立系ラジオ局でラジオリポーターを務めた後、swissinfo.chの前身であるスイス国際放送にプロデューサーとして参加。映像学校で学んだ後、フリーの映像制作者として活動。2001年にswissinfo.ch入社。
Julie Hunt, SRF, swissinfo.ch
-
English
en
Voters to decide fate of giant Basel aquarium
原文
もっと読む Voters to decide fate of giant Basel aquarium
同水族館をバーゼル市内中心部に建設する計画は、自治体が承認した。これに対し反対派がレファレンダムを提起し、必要な署名を集めて住民投票に持ち込んだ。投票は19日に国民投票と合わせて行われる。
大規模な計画
バーゼル動物園は、10年前から水族館の計画外部リンクを進めてきた。チューリヒの建築事務所Boltshauser外部リンクは、世界中の水の生き物数千匹を約40個の水槽(そのうち一つは高さ約8メートル)に収容する設計を考案。サメやエイ、ペンギン、サンゴ、深海魚、干潟の生き物のほか、国内種ではウナギやサケなどがそこで暮らす。
2021年に工事を開始し、2024年に開館予定。年間約70万人の来場者を見込む。
海の動植物は「持続可能な捕獲」によって入手する。クラゲとサンゴは、バーゼル動物園と他のブリーダーが提供する。バーゼル動物園はこのような大規模な計画を立ち上げて国外の注目を集め、訪問者数の停滞に歯止めをかけたい考えだ。
建設費の1億フラン(約110億円)は寄付で賄う。バーゼル動物園はすでに5700万フランが集まったとしており、そのうち500万フランはジュネーブの個人財団が拠出するとされる。水族館を財政的に自活させるのが目的で、運営費は年間480万フランを見込む。
反対派
環境保護団体のフランツ・ヴェーバー財団は、このプロジェクトが持続不可能だとして、異議を申し立てた。財団が代替策として提案するのは、仮想現実を活用したバーチャル水族館「ヴィジョン・ニモ」だ。
プロジェクトのウェブサイトでは「ヴィジョン・ニモは、旧来の大型水槽がもたらす問題を解決する。問題とは、水族館のために海洋動植物が取引されることに伴う海の搾取だ」と訴える。
ヴィジョン・ニモは、CGアニメやインタラクティブな映像投影、その他の技術を活用する。
バーゼル市政府がヴィジョン・ニモではなく水族館の建設計画を支持する決定を出すと、フランツ・ヴェーバー財団は緑の党や反対派でつくる団体「NOzeanium外部リンク」とレファレンダムを提起。住民投票の実施に必要とされる2倍以上の署名を集めた。
フランツ・ヴェーバー財団などは、新しい水族館のため世界中から動植物を輸入する考えに反対。「動物虐待」や「生態系の弱体化」につながる可能性がある、と主張する。
バーゼル動物園のオリビエ・パガン代表はこれに対し、水族館で生き物を見ることで、訪問者が生態系を大事にするようになると反論している。
(英語からの翻訳・宇田薫)
続きを読む
おすすめの記事
EUの銃規制強化、スイス版「税と社会保障の一体改革」ともに可決 バーゼル水族館は否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで19日、国民投票が行われた。欧州連合(EU)の銃規制強化をスイスも踏襲するか否かと、法人税改革と年金の追加財源確保を合体させたスイス版「税と社会保障の一体改革」はいずれも賛成多数で可決された。バーゼルの巨大水族館建設は否決された。
もっと読む EUの銃規制強化、スイス版「税と社会保障の一体改革」ともに可決 バーゼル水族館は否決
おすすめの記事
新しい水族館建設に待った!住民投票へ持ち込み
このコンテンツが公開されたのは、
バーゼルで予定されていた世界中の海洋生物と淡水生物を紹介する新しい大規模の水族館の建設が、反対派の緑の党と環境団体によって国民投票(レファレンダム)に持ち込まれた。
もっと読む 新しい水族館建設に待った!住民投票へ持ち込み
おすすめの記事
動物園は動物にとって良いのか悪いのか?
このコンテンツが公開されたのは、
バーゼル動物園では大型の水族館プロジェクトが、またチューリヒ動物園ではゾウの新施設が公開された。生物をその生息地から切り離して飼育すると言う意味で、「動物園」というコンセプトそのものを批判する声も上がっている。
もっと読む 動物園は動物にとって良いのか悪いのか?
おすすめの記事
ロマンチストで孤高の環境活動家 フランツ・ヴェーバー
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの環境保護活動家フランツ・ヴェーバーさんが2日、91歳で死去した。フランツ・ヴェーバー財団が発表した。スイスでは、別荘の建設に上限を設けるイニシアチブ(国民発議)を成功させた人物として知られるヴェーバーさん。環境保護活動に尽力した軌跡をたどった。
もっと読む ロマンチストで孤高の環境活動家 フランツ・ヴェーバー
おすすめの記事
スイスの複数都市で別荘比率が上限に接近
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・フランス語圏の日刊紙ル・マタン日曜版によると、スイスの多くの都市で家屋の別荘比率が上限の2割に近づいている。
もっと読む スイスの複数都市で別荘比率が上限に接近
おすすめの記事
世界遺産のラヴォー、ブドウ畑で繰り広げられる戦い
このコンテンツが公開されたのは、
ドウの段々畑の奥にレマン湖が広がるラヴォー地区。ここは、ユネスコ世界遺産に登録された景観とスイスワインの王様シャスラで有名だ。しかし、穏やかな風景とは裏腹に、景観保護をとるか経済発展をとるか、地区の将来をめぐって激しい争いが繰り広げられている。決着は5月18日につく。
もっと読む 世界遺産のラヴォー、ブドウ畑で繰り広げられる戦い
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。