ジュネーブで未成年者の国民投票「模擬投票」その意義は?
スイスで19日に行われる国民投票に合わせ、投票権を持たない16~17歳の未成年者約5千人による模擬投票(電子投票含む)がジュネーブ州で行われる。スイスでは過去最大の試みだ。
スイスでは年4回、国民投票がある。州、自治体レベルの住民投票も同時に行われ、有権者がさまざまな案件の是非を判断する。19日の国民投票では、法人税改革と年金財源確保を合わせたスイス版「税と社会保障の一体改革」と、欧州連合(EU)の銃規制強化をスイスも踏襲すべきか否かの2件の是非が問われる。
今の若者たちは街頭デモに繰り出し、気候保護を訴える。それが無気力な政治家を急き立て、CO2削減の政策に取り掛からせる方法だからだ。
とはいえ、未成年者たちはスイスの政治決定に直接かかわることができない。18歳の誕生日を迎えるまでは、投票権がないからだ。
国の政治的決定に参加する大切さを理解することは、最初のステップに過ぎない。自治体、州、連邦というすべての政治レベルで確立された直接民主主義のツールを知る、そしてこのような国民の権利を行使するノウハウを知ることも重要だ。
「公民権教育を真剣に考える」
それがまさに悩みの種でもある。ジュネーブ大学のパスカル・シアリニ外部リンク教授(政治学)は「問題は、今の若者が(政治的権利を行使する)心構えができていないことだ」と指摘する。同教授は、若者の投票離れに関し多くの研究を行ってきた人物だ。
19日の国民投票と並行して行う未成年者の模擬投票は「国民投票と無関係と受け止められるのでなければ歓迎したい」という。
シアリニ教授は「若者の投票離れを食い止めるためには、公民権教育の在り方を真摯に考え直すべき」と指摘。「模擬投票自体が重要なのではなく、その前段階の作業が大事だ」と話す。つまり、若者に知識と政治的スキルを身に付けさせることが重要なのだという。
模擬投票を主催する公教育担当部局の関係者とジュネーブ州政府は、それをよく分かっているため、ここ最近緊密に連携を取ってきた。19日の模擬投票は、ジュネーブ州がこれまで力を入れてきた戦略の1つに過ぎない。
18歳未満の未成年者が参加する模擬投票は既に始まっている。義務教育を終えた後の「後期中等教育課程」(日本の高等学校にあたる)と呼ばれる学校の生徒、または職業訓練生の全員が参加する。
投票手続きは本来の国民投票と全く同じ方法で行われ、参加者は投票用紙と電子投票に必要なコードを受け取る。集計も投票日に同時に行われる。
州の後期中等教育課程理事会委員で、公民教育推進の責任者を務めるバスティアン・イッシャー氏は、模擬投票の参加者は投票前に授業できちんと準備をしなければならないと話す。
授業では、教諭が生徒たちに今回の2つの案件を紹介する。それから生徒の質問に答え、政府広報など投票に関する公の文書をすべて提示する。
ここでいう文書は、案件の詳細が記載された政府発行の投票ハンドブック、案件の内容と政府の見解を紹介した公式ビデオ外部リンク、ジュネーブ州発行の投票ハンドブック外部リンクなどだ。また、若者の投票推進団体「Easyvote外部リンク」が作成したビデオ外部リンクも紹介する。
イッシャー氏は、学生が政治的権利を「できるだけ実用的かつ現実的に」行使できるようにするのが模擬投票の目的だと話す。学校が「市民的、批判的な精神を培うのに必要な知識と道具」を教え、それによって若者が「完全な市民」になるという。
これは公教育の目的にも合致する。公教育の目的は、ジュネーブ州の憲法外部リンクと教育法外部リンクに明記されている。
忍耐が問われる
イッシャー氏は、次年度もこの試みが継続されることを願うが、それは今年の結果いかんだという。はっきりしているのは、公民権教育のために「やるべきことはまだたくさんある」ということだ。
シアリニ氏は「学校で若者に社会的・政治的統合を身に付けさせるには、継続・集中的かつ長期的な活動が必要だ」と強調。その一方で「奇跡を期待してはいけない。1つ2つの措置では、若者の投票率を20ポイントあげることはできない」と話す。
ジュネーブの未成年者たちの投票結果は、本来の有権者と同じものになるのか、または全く異なるものになるのか。19日の結果が待たれる。
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(独語からの翻訳・宇田薫)
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