9月22日のスイス国民投票、職業年金改革と生物多様性イニシアチブは否決
スイスの有権者は、22日に実施された国民投票で、職業年金改革と生物多様性の保護強化を求める提案の2件を否決した。
※この記事は21日に配信されたものですが、22日の投票結果を受け更新しました。
職業年金改革案は67.1%の反対、生物多様性イニシアチブは63%の反対で否決された。投票率は45%だった。
職業年金(BVG/LPP)は年金制度の第2の柱で、一定額以上の給与がある被雇用者に加入が義務付けられている。第1の柱である強制加入の老齢・遺族年金(AHV/AVS、日本の国民年金に相当)と合わせて退職前給与の約6割相当を支給するのが狙いだ。自営業者が入れる任意の職業年金もある。
職業年金改革の主な目的は、義務部分・任意部分のうち、前者の義務的職業年金の財源を長期的に確保することだ。
政府は人口の高齢化と低金利に伴う運用利回り低下で財源が目減りしているとして、年間の年金支給額の算出基準となる「最低転換率」の引き下げとそれに対する補償措置などを改革案に盛り込んだ。
もう1つの目的は、パートタイム・低所得労働者(大半は女性)の待遇改善だった。
改革では義務的職業年金の対象となる最低年収を現行の2万2050フラン(約370万円)から1万9845 フランに引き下げ、これまで職業年金の恩恵を受けられなかった人たちへ門戸を広げることを目指した。
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職業年金改革が国民投票に 争点は?
改革案は右派・中道政党が支持し議会で可決されたが、左派や労働組合が施行に反対しレファレンダム(国民表決)を立ち上げて国民投票に持ち込んだ。反対派は、保険料が上がるのに受け取れる年金が減る、という点に絞って反対運動を展開した。
有権者の支持は投票日が近づくにつれて低下。投票2週間前のスイス公共放送協会(SRG SSR)の世論調査では、反対が51%と過半数をわずかに超え、国民投票ではさらに反対が伸びた。
>>世論調査に関する詳しい記事はこちら↓
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生物多様性イニシアチブも支持薄
2020年9月に自然保護団体と環境保護協会が立ち上げた同案は、スイスの生物多様性を保護強化するために、政府と州に十分な資源と土地を確保するよう求める内容だった。また景観と建築遺産の保護強化を憲法に明記することも求めた。
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スイスの「生物多様性イニシアチブ」は行きすぎ?それとも必要?
左派政党と中道の自由緑の党が同イニシアチブを支持。国内の生物多様性は満足のいく状態ではなく、既存の対策では不十分だと訴えていた。
連邦環境局 (FOEN)の報告書では国内自然環境の半分、種の3 分の1が生存を脅かされているとした。
一方、主要右派政党と中道・中央党、農業界、経済団体はイニシアチブに反対する連合を結成した。イニシアチブの内容が「極端すぎて効果がない」と批判し、生物多様性の促進は現行法で十分事足りると訴えていた。
有権者の支持は投票日が近づくにつれ低下した。直近の世論調査では反対が51%に上った。
編集:Samuel Jaberg、仏語からの翻訳、編集:宇田薫、校正:上原亜紀子
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