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ゴールデンパス・ライン、革命的技術で乗り換え不要に

スイスのゴールデンパス・パノラマ列車に先駆的な技術が搭載され、乗客はヤシの木が立ち並ぶジュネーブ湖畔からベルナーアルプスの山々まで、乗り換えなしで列車の旅を満喫できるようになった。

それも全て、欧州の鉄道メーカー、アルストムの先駆的な軌間変換装置のおかげだ。2015年、ゴールデンパス・ラインを走るパノラマ列車用としてモントルー・オーバーラント・ベルノワ鉄道会社(MOB)が、スイス西部・ヴィルヌーヴの町にある同社に製作を依頼した。

MOBは続いて2018年、スイス北部・トゥールガウ州にある鉄道車両製造会社シュタドラーに軌間可変車両23台を発注。パノラマ列車、ゴールデンパス急行はモントルーとインターラーケン・オストをつなぐ観光列車で、MOBとBLS鉄道会社が共同運行している。

ジュネーブ湖と、グシュタードなどベルナー・オーバーラントを鉄道で結びたい。そんな積年の夢を実現したのがゴールデンパス・ライン外部リンクだ。開通は1901~16年にわたって段階的に進められた。線路敷設の際、モントルーからツヴァイジンメンまでは山岳地域に適した狭軌(幅1メートル)が、一方ツヴァイジンメンからインターラーケンまでは標準軌(幅1.435メートル)が採用された。両方の線路を走行できる列車は無く、乗客は常にツヴァイジンメンで乗り換えなければならなかった。

だが、これも数週間前までの話だ。ゴールデンパス急行がインターラーケンからモントルーまで初めて乗り換えなしで運行したその日、スイス在住のカナダ人カントリー歌手シャナイア・トゥエインさんとスイスの伝説的スキーヤー、ミヒャエル・フォン・グリュニゲンさんが新技術を搭載した列車の出発式に立ち会い、初運行の祝事に花を添えた。

ボギー台車の仕組み

この技術では車両の軌間を40センチ以上スライドできるほか、世界で初めて車体の高さも駅のホームに合わせて調節できるようになった。列車は最高時速15キロの低速で走りながら軌間を変えていく。ボギー台車や車両の製作費を含むプロジェクトコストは、総額8900万フラン(約130億円)だ。

MOBはこの新技術でゴールデンパス・ラインの集客力が高まると期待している。今でも利用者数の8割はこの観光列車の乗客が占めている。MOBの広報担当者ジェローム・ガシェ氏は「中国、台湾、インド、韓国など、遠方の市場の反響は大きい」と話す。来年6月までは1日1往復、その後は夏に向けて本数を増やしていく。慎重なスタートの理由については、「観光市場がパンデミックや地政学的な混乱からまだ完全に回復していないため」と説明した。

英語からの翻訳:小山千早 

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