スイス医療チーム、高山病調査で標高7,546メートルに挑む
スイスの山岳医療チームが来年半ば、中国大陸の奥深くにある標高7,546メートルの山へ高山病の調査旅行に出発する。
目指すのは、中国西域とタジキスタンの国境沿いにあるムスターグ・アタ山(「氷の山の父」の意味)。7,000メートル級では比較的登りやすいと言われるこの山も、吹雪と高山病が襲う。
個人差もあるが、通常2,000メートルを超える高度の高い地点に行けば、吐き気や意識障害といった高山病の症状を引き起こすといわれ、対応が遅れれば死に至ることもある。今回の調査では、7,000メートル級の高度が人体にどのような影響を及ぼすのかを調べる。
より高く
高山病の症状は二日酔いに似ており、頭痛や倦怠感がおこり、時に吐き気をもよおす。こうした症状はすぐには現れず、高地に着いてから随分後に出てくるという。症状がさらに重くなると、真っ直ぐに歩くことも困難になり、動かなくても息切れが激しくなる。
今のところ、高山病にかかりやすいかどうかを調べる方法はなく、訓練によって改善することもないといわれる。
スイスの山岳医療チームは昨年すでに、国内最高峰モンテ・ローザの山小屋(標高4,554メートル)で高山病が人体に及ぼす影響について同じ調査を行っている。今回中国で行われる調査は高度が倍近くになる。
「高度が高い分だけ気圧もそれだけ低くなり、血中酸素飽和度(酸素とヘモグロビンが結合する割合のことで、通常は98%以上が正常)も低くなるはず。高度がより高くなったことで得られるデータがあるはずだ」と調査チームの責任者トビアス・メルツ氏は話す。
高所に難題ありき
中国での調査は、10名のガイドと4医師を含め、総勢36人の大遠征隊となる予定。高度に慣れるために、調査には1カ月とゆっくり時間をかけて行う計画だ。
調査期間中、高度7,000メートルに至るまで随時、低酸素状態が脳に与える影響や呼吸数、心拍数の変化を調べていくとしている。また、万が一の場合に備えて、スキーで山を降りることができるよう緊急の救助体制も整える。
調査開始まで1年近くあるが、調査チームはすでに被験者の人選に着手している。被験者は登山経験があることが条件で、高山病に以前かかったことがある人もプロジェクトに参加してもらう意向だ、とメルツ氏は話す。
「高度7,000メートルでは何をするにも難儀で疲れる。実験室でコーヒーブレイクというわけにはいかない。調査を行う研究員にも過酷な負担を強いる調査になると思う」と同氏は話す。調査で使用される医療器具も7,000メートル級の山で正常に機能するかも、現在のところ未知数だ。
スイス国際放送 スコット・カッパー 安達聡子(あだちさとこ)意訳
ムスターグ・アタ山:
中央アジアの大草原にそびえる標高7,546メートルの独立峰。
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。