チューリヒ連邦工科大学に女性の学長誕生
21のノーベル賞受賞に輝くチューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) に初の女性学長誕生。
152年の歴史を誇る同大学は研究の質の維持に努めることを最大の目標にする。
スイスにある2つの連邦工科大学の雄、チューリヒ連邦工科大学は今まで21のノーベル賞受賞に輝き、ヨーロッパで最高の研究レベルを誇る。しかし研究費の削減や1年目で30%の学生が退学する、などの問題も抱える。9月から同大学の初の女性学長に就任する、ハイディ・ヴンダルリ・アレンスパッハ教授に話を聞いた。
swissinfo : 初めての女性学長誕生ですが、どういう重要性がありますか?
ヴンダルリ・アレンスパッハ : このこと自体、特別重要ではないのです。女性を学長にと探していた訳ではありません。ですから選出されてよけいにうれしく思っています。
swissinfo : しかし、今後もっと女性教官を増やしたいという希望をもっておられるのでは?
ヴンダルリ・アレンスパッハ : 確かに、女性教官を増やそうと長年努力してきました。しかし、単に女性教官の採用を増やしても始まらない。もっと若い時期に、女性に科学研究がいかにおもしろいかを教えないとだめだと思います。
創立150年の記念事業の一環として、青少年を研究室に招きました。すると10から12歳の女子がここの研究に一番興味を示していました。
女性研究者が十分でないという問題をもう15年も前から検討しています。どの分野であろうと、女性は男性と同等のチャンスをもつべきです。しかし成功のチャンスを与えるには、十分早い時期にことを起こさないといけません。
swissinfo : ところで、入学する学生の30%が一年目でやめていく事実をどう受け止められますか?
ヴンダルリ・アレンスパッハ : 入学試験をしていないので、どんな分野であれ、大学入学資格を持っている者は我が校に入れます。従って、例えば音楽に専念している者が1年目の試験に失敗するのはあたりまえなのです。
入学前に入学希望者に情報をもっと提供するというプロジェクトを考えています。第1ステップは入学希望者にアドバイスし、1年目の試験に合格する可能性について教えます。次のステップで、教官や先輩の学生が入学した学生を監督し、フィードバックします。最後は将来の職業についてのアドバイスを行います。
30%がやめていくというのは本当に頭が痛い問題です。しかし一方で、レベルを維持するには仕方のないことでもあるのです。
swissinfo : 学長に就任されて、まず行うべき任務はなんでしょうか?
ヴンダルリ・アレンスパッハ : アカデミックな部門を確かにすること、つまり教育に力を注ぐことです。質の高さの維持、研究器機の精巧性の維持、さらに何がいま重要か、何が必要でないか見分けることも大切です。
質の高さを維持しながら、官僚的複雑さを避けたいと思います。
swissinfo : 外国からの学生をもっと受け入れたいと考えられますか?
ヴンダルリ・アレンスパッハ : 我が校は、外国人学生を多数受け入れてきた伝統があります。スイスが鉄道を引き、アルプスを通過するトンネルを作った時に、まさしく我が校も開校されました。当時、スイスには十分専門家がいなく、半分以上が外国から来た専門家で占められていました。
swissinfo : 新しい予算でうまくやっていけそうですか?
ヴンダルリ・アレンスパッハ : 不満を言うべきではないと思います。しかし、いつも新しいプログラムが登場し、これに予算が追いつかないのも事実です。
スイスはかなりいいほうですが、過去10年で研究費は増えていません。新しいプロジェクトを始める場合、実現したいものは何か、新しいものを実現するには何をやめるべきかなど慎重に検討して予算を使っていく必要があると思います。
swissinfo、 聞き手 マチュー・アレン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 意訳
おすすめの記事
連邦工科大学 ( ETH )
ハイディ・ヴンダルリ・アレンスパッハ氏
チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) の自然科学科で生物学を専攻する。
チューリヒ連邦工科大学に教官として戻る前に、アメリカに滞在し、その後スイスに戻りスイス癌センター、チューリヒ大学で研究を行う。
1986年同大学の助手、1992年に助教授に就任。1995年来、薬学研究所の生薬学の教授を務める。
今年9月から同大学の学長に就任する。
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。