バイリンガルの街 仏独どちらが優勢?
多言語国家スイスではバイリンガルの街や州が幾つかある。仏語と独語が飛び交う、国境言語線上にあるビエンヌとフリブールに注目する。
バイリンガルの街の日常ってどんなものだろうか?ベルンの東北にあるビエンヌ(独語ではビール)で今月行われた「バイリンガル会議」の報告をもとに考えてみよう。
フリブールの例
首都ベルンから南東にあるフリブールは美しい古都であるばかりでなくサリーヌ川を境界にフランス語圏とドイツ語圏に分かれていることでも有名な街だ。
フリブール大学では両言語が使用されているが、学校などでは人口比のせいか主にフランス語が優勢だ。多数派であるフランコフォン(=仏語を母語に話す人)はフランス語を頑なに守りつづけている。というのも、スイスではドイツ語が優勢という言語状況を反映して「ドイツ語化に脅かされる恐怖」が抜けきれないためだ。それは政治や言語政策に影響を与え、議会では90%から95%の発言がフランス語だという。言語学者のクローディンヌ・ブロヒ氏は「例えばフリブールでは街角で自然にフランス語で話しかけるが、ビエンヌ(ドイツ語が多数派)ではどちらでも構わない」という。
少数派ジェルマノフォンの有利?
同上のブロヒ氏は「子供達を見てみるとジェルマノフォン(=ドイツ語を母語とする人)の方が圧倒的にバイリンガルが多い」と指摘する。子供達はいとも簡単にスイスドイツ方言からなまりのないフランス語に切り替える。それは、ジェルマノフォンの子供達にはドイツ語では取得できない科目が多くあるためでフランス語が必須だからだ。ブロヒ氏は「皮肉なことに、こういった偏った言語政策で結果的に重要なポストを占める人々にジェルマノフォンが多くなって、フランコフォンがまた嘆くことになる」と批判する。インテリ層のこれらのポストは完全にバイリンガルであることを要するからだ。
また、フランコフォンは言語バリアともいえるサリーヌ川を越えたドイツ語圏に住むのを嫌がる。しかし、ジェルマノフォンはそうでもないという。どうやら、スイスでよく耳にする「言語の溝」(=ロスティ・グラウベン)はバイリンガルの街フリブールでも消えないようだ。
スイスドイツ語方言というもう一つの壁
スイスの言語状況をさらに複雑なものにするにはスイスドイツ語という方言である。ドイツ人もなかなか分からないばかりか、出身地によってスイス人同士でも通じにくいという地方性が強い言語だ。だから、ブロヒ氏は「ドイツ語を話すスイス人は標準ドイツ語より、フランス語を喋る方を好む」と分析。そして、フランコフォンのスイス人は「方言が分からない」といった理由でドイツ語習得を逃れることが多いとか。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
2000年の国勢調査によると、ビエンヌの約4万9千人の住人のうち、ドイツ語を話す住人は約2万7千人と多数で、フランス語は約1万3700人。イタリア語は約3000人弱だ。
フリブールはフランス語勢が優勢で人口約3万6千人のうち、フランス語が約2万1千人、ドイツ語が約8千人、イタリア語は約1千8百人だ。
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