レマン湖の湖底に天然ガス?
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天然ガスを発掘する「ペトロスビブリ」社は、少なくともスイスでの消費8年分をまかなう量の天然ガスが、レマン湖の湖底に眠っているとして、その鉱床を探るためのボーリングを11月に開始する。
2011年に、もしこの鉱床の存在が証明されれば、スイスだけではなくフランスもこのガス開発に興味を示すはずだ。
垂直に3キロメートル
もしガス鉱床があるとするなら、それはレマン湖畔のシオン城やジャズフェスティバルで有名なモントルーからさほど遠くない湖底だ。
この試掘をスイス政府とヴォー州は4月にすでに承認。最後に残った関係する町、ノビル ( Noville ) も最近やっとゴーサインを出した。この結果、「ペトロスビブリ ( Petrosvibri ) 」社の副社長フィリップ・プティピエール氏は、「ボーリングは11月初めにスタートし、6カ月から8カ月かけて調査を行う」と発表した。
同社は、ノビル町の農業用地に約1万平方メートルのプラットフォームを建設し、そこから垂直に3キロメートル掘り下げ、次いで斜めにレマン湖にアクセスする。従って湖水が掘ったトンネルに入りこむことはないという。
天然ガス8年分発見か
こうした大掛かりなプロジェクトは、当然環境保護問題に結び付く。このため、非政府組織 ( NGO ) の「プロナチュラ ( Pro Natura ) 」はプロジェクトに反対を表明することに決めた。
これに対しプティピエール氏は、
「環境に対する打撃は非常に詳細に調査され、これを最小限に抑えるための対策もリストアップされている」
と保障する。
一方、「世界自然保護基金 ( WWF ) 」は、エネルギー資源と消費地との隣接度が高いことを理由に今回のプロジェクトに基本的に反対はしていない。しかし、2250万フラン ( 約19億8900万円 )の試掘費を再生可能エネルギー開発にあてるほうがよいのではと提案している。
しかしプティピエール氏は、再生可能エネルギー開発には2250万フランでは十分ではないこと、またスイスにとってエネルギー自給安全保障やエネルギー資源の多様化が大切であることを強調する。
ペトロスビブリ社によれば、今回スイスでの天然ガス消費8年分をまかなう量の発見の可能性は50% 。また現在の消費量を基準にした70年分の消費量は15%の確立だという。同社はまた、石油の発見も完全に否定はできないと見ている。
ガス、石油開発に再び火がつく
今回のペトロスビブリ社のプロジェクトは、アルプス山脈周辺地域で近年活発になった炭化水素鉱床開発の一環だ。
「スイスの1960年代、70年代に始まった炭化水素鉱床の開発は、石油1バレルがわずか9ドルの値段になった90年代に完全にストップしてしまった。しかし、石油価格の高騰と、スイスの新しい地質学理論の発展に伴ってガスと石油の開発に再び火がついた」
とペトロスビブリ社のコンサルタント、ベルナール・ロイ氏は説明する。
この傾向はドイツ、イタリア、フランスでも同様だ。ロイ氏によれば、ジュラ山脈の地下は恐らく石油が多く埋蔵されており、基本的には天然ガスが豊富なアルプス山脈周辺地下と対照をなすという。
こうした研究結果から、炭化水素鉱床開発はほかの会社の意欲もそそり、例えば「シーグ ( Seag AG ) 」社は、ジュラ山脈周辺にあたるヴォー州北部のキュアルニ・エセルティンヌ ( Cuarny-Wssertine ) 地域とベルン地方の開発権を獲得。今年中には試掘を始めるという。同社はまた、スイス東部でも開発の計画を持っている。
一方、「セルティック・エナジー ( Celtique energy ) 」社は ヴォー州とヌーシャテル州の全ジュラ山脈地域での鉱床研究をスタートさせた。また、ほかの企業が、ティチーノ州の鉱床に興味を示している。だが、現在のところ、計画が最も進んでいるのはペトロスビブリ社のレマン湖天然ガス開発だという。
フレデリック・ビュルナン、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、里信邦子)
スイスでの天然ガスの消費量は1970年から1996年の間に急激に伸び、現在平均で年間11%の伸び率を示している。
現在あらゆる消費エネルギーの中で、天然ガスは12%の消費率を占める。
天然ガスを最も多く消費するのは一般家庭で、およそ40%を占め、工業生産関係がそれに次ぎ33%を占める。
ペトロスビブリ社は、ヴォー州とヴァレー州にまたがるレマン湖畔の地域、レ・シャブレ ( Les Chablais ) での天然ガス ( 炭化水素ガス ) 開発を目的とした会社。
天然ガスの貯蔵、輸送、配給などを行う「ガズナット ( Gaznat ) 」社と「ホルディガズ ( Holdigaz ) 」社が、ペトロスビブリ社の株をそれぞれ66% 、 34%、所有している。
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