世界情報社会サミット開幕
インターネット社会のあり方を各国首脳陣が話し合う国連主催の初めての情報技術に関するサミットが10日から12日までスイス、ジュネーブで行われる。
5年間かかって策定された基本宣言、行動計画の目的はどのように情報格差(デジタルデバイド)を解消し、ITが途上国発展の武器となるような環境を提供するかだ。
デジタル連帯基金について
6回にも渡る準備会合を得た後、サミット開催の前日の9日にようやく、対立が続いていた「デジタル連帯基金」設立の是非について「自発的な国際デジタル基金を作るという意思を認識する一方、2004年の12月までにそのような基金設立の必要性と現に存在する基金について研究、結論を出す」という形で結論は先送りされた。セネガル大統領が提案したこの基金設立をアフリカ諸国などが押していたが、日本、EUやカナダなどが「既存の基金を利用するべきだ」と反対していた。なお、基本宣言と行動計画が採択されるのは最終日。
基本宣言
準備会合で最大の問題点となっていたネット上の住所、ドメイン名の調整・管理を誰が行うかといったインターネット管理問題ではこれまで通りの民間主導にするか、ITU等の政府間組織に任せるべきかに意見が別れていた。しかし、国連が作業部会を設立し、次回2005年のチュニジアでのサミットで提言をまとめることで決着した。
注目されていたメディアの役割について、多くの先進国がネット上でも報道の自由が不可欠だとする一方、中国など幾つかの国がこの記載に難色を示していた。結局、「メディアに報道の責任を求める」項目を入れることで妥協した。国連事務局広報局暫定局長のシャシ・タルーアはジュネーブで「この結果は勝利と見ても良いのではないか」とコメントした。
サミットの効用
共同主催者の国際電気通信連合(ITU)の内海善雄事務局長は9日の会見で「世界人口の2分の1が電話がなく、3分の1がインターネット接続がない。このギャップを埋めるには僅か、16億ドル、ネット接続を入れても63億ドルに過ぎない」と語り、「デジタル・デバイドを解消するには各国の政治的意思が必要だ」と強調した。そして、「このサミットの最も重要な成果は情報社会の構築がどの国の発展にも不可欠だと共通の認識をできたこと」と語った。
寂しいサミット?
当初は仏のシラク首相や独のシュレイダー首相など多くの首脳団が出席する予定だったが、蓋を空けてみると著名な首相は皆閣僚レベルに代わっており、主席レベルの出席は途上国でも少なくなった。米国のこのサミットに関する無関心も指摘されたが、ITUの内海事務局長は「スケジュールの問題。誰が出席するかより成果で判断して欲しい」と会見で語った。
スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)
<世界情報社会サミット>
会期は12月10日から12日までの3日間。ジュネーブで国連と国際電気通信連合(ITU)が主催、スイスがホスト。
情報技術ITに関する世界サミットは初めて。
日本からは麻生太郎総務大臣、ユネスコの松浦晃一郎事務局長、NHKの海老沢勝二会長などが出席予定。
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