北極が語る5000万年の地球環境
氷に刻まれた地球の「記憶」を解明するため、スイスや日本、米国を含む共同探査チームが8日、北極海へ向かった。
今回の航海では、北極海から約250キロ離れたロモノソフ海嶺で深海底を掘削し、海洋変動を記録した堆積物を採取する。この調査の結果、およそ5000万年前まで遡れるとしている。北極海の深海底を掘削するのは世界で初めて。
プロジェクト名は「北極掘削航海(ACEX)」。今回の航海に参加した科学者の数は19人で、予算総額は900万ユーロ(約12億円)となっている。掘削作業は9月16日まで行われる予定だ。
激動する地球
今回の航海は、「統合国際深海掘削計画(IODP)」という名が付いた国際的な科学プロジェクトの一環で、最初の実地探査となる。IODPは当初、日米を中心に始まった計画だが、その後、スイスを含む欧州と中国が参加して進められている。
IODPのメンバーで、欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD)のスイス代表を務めるジュディス・マッケンジー教授は、「掘削される堆積物は地球史の教科書そのもの」と話す。
同教授によると、5000万年ほど前の北極には氷がなく、気候も温暖でワニが生息していたと考えられているが、なぜ北極が氷河化したのか理由はわかっていないという。また、北極海は全世界の海洋循環に関係しているとも指摘されているが、実態は謎に包まれたままだ。
マッケンジー教授は「北極の海氷がいつ頃から形成されたのかなど、気候変動における北極海の役割を解明したい」と今回の航海に期待を寄せる。
掘削航海終了後、採取された堆積物はドイツのブレーメン大学で分析される予定となっている。
スイス国際放送 モルヴェン・マクレーン 安達聡子(あだちさとこ)
北極掘削航海(ACEX)の日程
8月8日
ノルウェーから出港。北極海ロモノソフ海嶺で掘削開始。
9月17日
ノルウェーに帰港。
11月頃
ドイツの大学で採取した堆積物の分析。
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