医薬品価格論争
スイスでは新医薬品だけが高いのではない。後発医薬品(ジェネリック薬)も他国より25%高いという。
製薬会社側は「古いデーターに基づいた数値だ」とこれに異議を唱える。
健康保険会社の代表機関サンテスイス(Santésuisse)の調査によると、スイスでは新医薬品だけが高いのではなく、ジェネリック薬も他国より25%高い。医療費を削減するにはジェネリック薬のコストも下げるべきだという。
ジェネリック薬も高い
「隣国7カ国の平均にまでスイスのジェネリック薬の価格を下げると、1億2000万スイスフラン(約112億円)節約できます」と語るのはサンテスイスのエコノミスト、フリドラン・マルティ氏。さらに彼は、最も販売率の高い20の新医薬品をスイスで一番安いジェネリック薬に置き換え、ドイツ、デンマーク、オランダ、英国、フランス、オーストリア、イタリアの同レベルのジェネリック薬と比較した。その結果、オランダを除くと、他の6カ国のジェネリック薬の価格はスイスよりずっと安いことが分かった。ジェネリック薬の生産価格で比べると、デンマークは64%、ドイツ、オーストリアでは23%、フランスでは20%も安かった。
そもそも新医薬品が高い
サンテスイスの調査によると、スイスでは新医薬品とジェネリック薬の価格差も大きく、販売価格で40%、生産価格では47%もの差がある。そこで、最も販売率の高い20の新医薬品を一番安いジェネリック薬に置き換えてみると、1億9900万スイスフラン(約186億円)の節約。最も高いジェネリック薬に置き換えても1億2800万スイスフラン(約120億円)節約できる。
また、最も販売率の高い新医薬品を100選んだ場合、2005年ではこれらの価格は20%上記7カ国より高かった。もしこれらの新医薬品価格をこれら7カ国の平均新医薬品価格にまで下げると、5億3200万スイスフラン(約498億円)節約できる。
「これら100の新医薬品の2005年の価格を2004年のそれと比べてみたのです。すると、ほとんど価格は変わっていません。全然安くなっていないのです」とマルティ氏。サンテスイスは根本的に今までと違う策を講じるべきだと連邦政府に訴えた。「特に、特許期間中(15年)だからといって価格まで保護するのはおかしいと思います。
特許期間中も政府は定期的に新医薬品価格を調査、検討し続けるべきです」。
まったく違う見方
ところが、医薬品を製造する側は同じように物事をみていない。製薬会社の代表機関であるアンテルファルマ(Interpharma)は「医薬品価格を下げるのに数年来努力を重ねてきた成果が今実っています」と言う。同機関によると、2006年の上半期に、スイスの医薬品価格はかなり下がった。最も販売率の高い100の医薬品をドイツと比べた場合、平均1.4%ドイツのほうが高かったという。
サンテスイスが示した調査結果に関しては、「調査は古いデーターに基づいて行われています。さらに、医薬品価格を下げるために製薬会社と連邦健康局の間で交わされた協定が今成果を挙げている事をこの調査は考慮に入れていません」と指摘する。
サンテスイスの広報課長、ペーター・マルベ氏は「我々は毎年、医薬品の価格を比較しています。昨年も、彼らにとって一番新しい数字を挙げてきて、我々の調査を批判してきました。では、毎回かれらが我々に渡す数字は古いものばかりなのでしょうか。
数字に対して厳密さに欠けると自らを批判しているようなものです」と、アンテルファルマの指摘を全く気にしていない。
swissinfo、外電 里信邦子(さとのぶ くにこ)
- 15年間の医薬品の特許期間が切れると、誰でもその医薬品を作れるようになり、簡単な試験のみで発売することができるようになる。これを後発医薬品(ジェネリック)と呼ぶ。
- 2億5000万スイスフラン(約234億円)。これが2005年9月に、連邦健康局と製薬会社の間で取り交わされた協定で示された医薬品価格減価で節約できる金額。
- 特許期間の切れた医薬品と特許期間中の医薬品とではその価格差が20%、時には40~50%にもなる。
- 連邦健康局によると、上記の協定のお陰で2007年から、健康保険料は1%安くなる。
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