安楽死のためにスイスにやってくる外国人が増えている
スイスでは、致命的な病気を持った患者に対する自殺ほう助が合法化されている。このため、祖国では禁止されている安楽死を求めてスイスを訪れる外国人が、近年増えてきた。
諮問委員会は、「政府は安楽死を行っている団体に対する監督を強化するべきだ」としている。
スイスでは、殺してほしいという要望に直接応えることは違法だが、基準を満たした自殺ほう助は認められている。つまり、前者は医師や看護する者が、致命的な薬を患者に投与するが、後者は、患者が自分で最後の手を下さなければならない。
「バイオメディカルに関する倫理諮問委員会」を取材した。スイスに安楽死を求めて来訪する外国人について、同委員会のマルグリット・ロイトホルトさんは、「外国人が、スイスに来て安楽死を選ぶことは倫理的に何の問題もありません」と話した。しかし、その一方で「スイスは自殺したい人々が集まる場所」という評判が世界的に広まるのを心配する声もある。
スイスに安楽死を求めてやってくる外国人は、2000年は3人だけだったが、2003年には91人に急増した。
簡単には考えないでほしい
スイスでは、ディグニタス(Dignitas)やエグジット(Exit)などの安楽死を促進する団体が存在し、スイス人・外国人の区別なく受け入れている。しかし、彼らの活動自体に問題はないものの、同委員会は、「政府は、彼らが設定された条件下で、法律にのっとって安楽死を実行しているかどうか、しっかり監督するべきだ」という提言を出した。
同委員会は、安楽死が流れ作業になることや、死ぬ願望をとりのぞく努力がなされなくなることを警戒している。安楽死が一般化すると、患者は治療に積極的でなくなったり、家族に負担をかけることを遠慮し始めたりすることが考えられる。
また同委員会は、安楽死は病院か自宅で行われること、そして心理的なものからくる自殺願望などは安楽死の対象としてはならないなど、より厳密なガイドラインを作成するべきだとしている。
2003年にチューリヒ大学が発表した報告書によると、スイスは欧州でも最も安楽死を選ぶ国の1つとなった。しかもこの数字は近年、増加の一途をたどっている。スイスで2002年に起きた自殺のうち、安楽死によるものは1割の137件に及ぶ。
このような同委員会の提言について、スイス議会は現在、安楽死に関する新しい法案を準備している。
swissinfo外電、遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
-スイスでは、殺してほしいという要望に直接応える安楽死は違法だが、基準を満たした自殺ほう助は認められている。
-欧州では、オランダとベルギーが直接安楽死を行うことを合法化している。
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