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溶け出す氷河、永久凍土 危険な地域はどこか?

2003年にはマッターホルンの崖崩れがあった。今年はアイガーの崖崩れがある模様だ Keystone

連邦環境・運輸・エネルギー・通信省環境局( 以下連邦環境省環境局 )は地球の温暖化により、どの地域にある氷河や永久凍土が溶け出す危険にさらされているかが分かる最新データを公開した。

アルプスの氷河や永久凍土が溶け出すと、崖、土砂崩れなどが起きる。特に有名な観光地がこうした危険にさらされているという。

 もっとも危険なのはアルプスの狭い谷間だ。ツェルマットはその代表的な例。ここは3方が永久凍土に囲まれている。

リゾート地が危険

 そのほか危険だと見られるのはグラウビュンデン州のサンモリッツ、サース・バレン( ヴァレー/ヴァリス州 )、カンデルシュテーク( ベルナーオーバーラント )など。7月23日付の日曜新聞NZZゾンタークで連邦環境省環境局のアドリアン・エシュリマン広報担当者が、以下のような例を挙げて語った。

 高級リゾート地のサンモリッツはツェルマットと同じように永久凍土に囲まれている。サース・バレンは氷河湖付近の氷河が溶け出し、村に危険を及ぼす可能性がある。カンデルシュテークも氷河湖の下に位置するので、山から大きな岩などが湖に落ちてきた場合、下の村が洪水になる危険があるという。これと同じような環境にあるグラン・ディクセンス ( Grand-Dixence ) も危険な場所として挙げられるという。

小さな崖崩れが連鎖反応を起こす危険も

 スイスの場合、永久凍土は森林限界の標高2300メートル以上にできている。チューリヒ州立大学の地理学者ヴェルフリート・ヘベリ教授も24日付の日曜新聞のゾンタークツァイトゥングで「永久凍土は北側に面し日陰になるところにあるが、解凍が進んでいるので、地形の大きな変化を招く可能性がある」と説明した。しかも、大きな崖崩れが起きるというだけではなく、小さな崖、土砂崩れが連鎖反応を起こし、居住地に大きな被害を与える可能性もあるというから心配だ。

 連鎖反応の例として挙げられるのは、2002年にカフカズ山脈で起きた土砂崩れだ。標高4780メートルの山頂で100万立方メートルあまりの容積の崖崩れが起こり、それに伴って氷河の全部が崩壊した。土砂、岩石、水、氷が混合した「土砂流の量は想像を絶し、33キロメートルにわたって谷が破壊された」とヘベリ教授。

 連邦環境省環境局環境局がこのほど発表した永久凍土図は各州に配布され、危険な場所があれば州当局が調査をすることになる。地図には崖崩れ、土砂崩れ、雪崩、洪水の危険性があるところが示されているが、州によってこうした問題に取り組む姿勢が大きく違うとヘベリ教授は嘆いている。

swissinfo、外電 佐藤夕美( さとう ゆうみ )

<永久凍土>
少なくとも2年以上凍り続ける土壌のこと。スイスアルプスでは、標高2300メートル以上にある。スイス全土の6%を占める。氷河は2〜3%を占める。
<氷河>
雪が解けずに積み重なり圧力によって氷となったもの。長年にわたって溶けずにいる。
スイスの氷河は標高の高いところにあり溶け出しにくいが、1985〜2000年までに18%減少した。

2006年
- 5月31日 ゴッタルドトンネルの壁が崩れ落ち、自動車を運転していたドイツ人夫婦が死亡
- 6月12日 グラウビュンデンのコルヴァッチで土砂崩れが起き、70歳の男性が死亡
- 7月14日 アイガーから70万立法キロメートルの崖が崩れ落ちた。
また、2003年夏にはマッターホルンの一部が崩壊した。

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