自殺が多発するスイス
15歳から24歳のスイスの青少年の死亡原因の第1位は自殺だ。年間の自殺総件数はおよそ1400件。交通事故による死亡の3倍にあたる。
予防策が不十分だという指摘があるが、連邦健康局 ( BAG/OFSP )が認めるように全国的に統一された対策はなく、連邦国家のため、州ごとで取り組みの程度も大きく異なる。
9月10日の自殺予防デーを機に、自殺防止のNGO「ストップ・スイサイド ( STOP SUICIDE ) 」のメンバーが挑発的なプラカードを持ってジュネーブ市内をデモンストレーションした。
国家的対策に欠ける
ストップ・スイサイドの創設者、フロリアン・イルミンゲールさんは説明する。特に青少年の死亡原因の第1位に自殺が挙げられることを憂慮しているという。
2003年に国が掲げた自殺防止対策計画「Y計画 ( Poroject Ypsilon ) 」は、医学と防止面の20の専門機関が関わっている。イルミンゲールさんもその主旨を支持する1人だ。しかし、Y計画のバルバラ・ヴァイルさんは「スイス全国で統一された防止対策が敷かれない限り、状況は変わらない。変わったとしても最小限だ」と懐疑的。全国的な状況分析ができてこそ州間の協力も可能だという。
専門家も不足
連邦政府においては、予防と健康促進の新法が作成されている最中だ。しかし「発効までには6年から10年はかかるだろう。その間、自殺問題は解決できないままだ」とヴァイルさんは言う。
一方、連邦健康局のザロメ・フォン・グレイエルツ氏によると「この法律は精神病患者を対象とするものであり、自殺は念頭にない。自殺は精神病とは見なされいからだ」とのこと。もっとも「自殺の9割は精神病に関係がある。よって、国として精神病についても健康管理の促進と予防策があれば、直接的に自殺についても影響を与えることができるだろう」という。
2年前、連邦健康局でスイスにおける自殺の実態調査を報告して以来、うつ病撲滅対策を敷く州も出てきた。しかし、グレイエルツ氏によると「保険局としては現在の自殺問題は重視されるべき課題だと考えるが、うつ病の専門家も不足し、また、国の対策としての優先順位も低く、自殺防止対策も十分に立てられない」と現実の難しさがある。
swissinfo、アダム・ボーモント 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳
– スイスの年間自殺者数は約1400人。交通事故死、麻薬による死亡、HIVによる死亡を合わせても自殺者数に及ばない。
– 2005年に発表された連邦保険局 ( BAG/OFSP ) の調べによると、10人に1人が自殺を試みたり実際に自殺をしているという。また、チューリヒ大学の調査によると、アメリカと並んでスイスは、武器による自殺が最も多い国となっている。武器所持の厳しい取締りにより、自殺者数は減るだろうというのが、同調査の結論だ。
– 現在スイス国内にある武器の数は340万と見られる。
兵役のために各家庭に保管されているライフルやピストルが犯罪や自殺に使われることは問題であると、社会民主党 ( SP/PS ) などを中心に「家庭での銃保管に反対」するイニシアチブを発足するための署名運動が始まった。現在家庭に保管されている軍隊の銃は、およそ150万丁に上ると見られる。同イニシアティブはこうした銃をすべて、軍隊が保管するようにすることを求めている。また、マシンガンなどの購入と所有の禁止のほか、国の管轄で武器所有者の登録システム、武器の所有を希望する人に対する厳しい検査の導入なども求めている。
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