離婚パーティーを開催しませんか?
スイス初の離婚展示会が5月31日と6月1日の両日、ローザンヌで行われた。既婚カップルの5割が離婚というスイスの現状に、離婚の情報を提供しようと企画された。開催者は将来「離婚パーティー」も手伝うという。
離婚率5割。2006年には2万1000組が離婚。「現実に離婚が増えているのに、多くの人がどこから始めていいか分からない。そうした人に情報と相談の場を提供したかった」と、開催者のベロニック・ラコルス氏。離婚は人生の一過程でドラマチックに騒ぎ立てることではないという。
サイトで離婚手続き
ローザンヌのホテルの1室を使った会場には、離婚に関係する専門機関、エージェントが20近く軒を並べた。離婚の法的手続きを受け持つ法律家グループから、離婚後の1人旅を専門にする旅行会社、離婚前後のストレス解消のための中国針灸まである。
「離婚経験者の私は離婚前後に何が必要か分かっているつもり。その関係の機関、専門家を集めた。勇気をもって人生の困難な一過程を乗り越えて欲しい。離婚は人生の失敗ではない」
とラコルス氏は強調する。
スイスでは従来、離婚は複雑で時間とお金がかかるものだった。さらに弁護士や判事などの前で争い、費やす精神的エネルギーも膨大だった。しかし、離婚が増えるにつれ、法的手続きなどが少しづつ簡単になりつつある。
そうした中で、今回一番「現代的」なのは、サイト上で法的手続きすべてを自分で行う「ディボース . ch ( divorce.ch ) 」のスタンドだろう。39フラン ( 約3900円 ) を、第1段階の離婚に関する法的説明に払い、第2段階で960フラン( 約9万6000円 ) 払えば、2種類の必要書類にサインするところまで行ける。その後プリントアウトして裁判所に自分で郵送する。
弁護士に頼めば、4000~8000フラン( 約40~80万円 ) かかると聞くが、破格では?
「この方法はあくまで、夫婦が離婚に合意し、友好的にかつ安く離婚を成立させたいという場合にだけ有効。財産問題などで争っている場合は不可能」
と弁護士のラファエル・ラインハルト氏の説明。しかし、1年前に立ち上げたにもかかわらず、1カ月に10~15組もがこのサイトを使って離婚しているという。
横には、「ディボース・アミアーブル.ch ( divorce-amiable.ch ) 」というスタンドがある。ここは弁護士と2回ミーティングを行い、自分たちでかなりの書類を用意するが、最終的書類は弁護士が書いてくれる。経費はわずか1000フラン( 約10万円 )。
「家具を自分で組み立てる、イケア( IKEA ) みたいなもの。だから安いが、子供の養育などの問題などで争っている場合は、まず向かいのスタンドの家族調停を通過してうちにくるのが妥当な方法」
とスタンドの責任者の説明。
離婚パーティー
以上が法的手続きだとすると、離婚の感情面、生の争いの部分を受け持つのが、「家族調停協会( Mediation Familiale ) 」。特に離婚を決めた夫婦に子供がいた場合、子供の養育の分担を話し合い、その内容が法的書類の一部になる。
また、現在の法律では養育の多くの部分を母親が受け持ち、父親はお金を払うだけで隅に追いやられる傾向がある。
「だから暴力的になる父親が多い。犠牲者はあなただけではないとなだめ、経験を共有し合うことで父親の怒りを静めることが第1目的だった」
と語るのは、さまざまな父親支援協会の1つ、ヴァレー州とヴォー州の「父親の権利運動 ( MCPV2 ) 」のルーベン・セゴビア氏。内面の問題を語ることに慣れていない父親たちは、話し合うだけで大きな救いを得るという。昨年「www.sospapas.ch」のサイトには、160人の父親が書き込みを行った。
こうした、具体的な情報、支援関係機関以外にラコルス氏が招待した関係者には、1人旅のための旅行会社や美容院、結婚指輪を作り直す宝飾関係者などもある。離婚後には、ルックスを変え、新しい人生をポジティブにスタートさせるためだという。
アメリカで流行している「離婚パーティー ( Divorce Party ) 」。結婚指輪を川に投げ捨てたり、時には結婚衣装を焼き捨てたりした後、友達とケーキとシャンペンで祝うというもの。
「人生に区切りをつけ、新しいページをめくるためのセレモニー。これからはやると思うが、スイスでは家族などからひんしゅくを買い、まだまだ難しい」
と、こうしたイベントも請け負うラコルス氏は分析する。
さらに、人は今後ますます離婚し、ますます結婚しなくなるだろうというのが、ラコルス氏の考えだ。
swissinfo、ローザンヌにて、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
人口1000人に対する離婚数
スイス 2.4 ( 2004年 )
欧州連合 2.0 ( 2002年 )
イギリス 2.7 ( 2002年)
フィンランド 2.6 ( 2003年 )
フランス 2.1 ( 2002年)
スペイン 1.0 ( 2002年 )
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