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COP29 なぜ気候対策資金の拠出国を増やせなかったのか

Laetitia Pettinotti

11月の第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)で、途上国の気候変動対策として年間3000億ドル(約45兆円)の支援が決まった。しかし途上国側は到底十分とは言えないと批判する。スイスは拠出国対象(ドナーベース)拡大を通じた増額を提唱したが実現しなかった。英シンクタンク「ODIグローバル」のレティシア・ペティノッティ氏が専門家の見地から経緯を解き明かす。

アゼルバイジャンの首都バクーで緊迫した交渉を重ねた結果、気候資金に関する新たな目標が現地時間11月24日未明に採択された。関係するすべての国や機関に対し、途上国の気候変動対策資金を2035年までに年間1兆3000億ドル以上に拡大するよう、広く漠然と呼びかけるものだった。

しかし2035年までに年間3000億ドルという目標は、途上国が必要とする額に比べれば低い。(インフレの影響や公的・民間資金の活用拡大などをふまえた)現状維持のシナリオで拠出されたであろう金額をかろうじて上回る。多くの交渉課題が俎上に載った。新たな目標額をどうすべきか、公的資金と民間資金の割合をどうするか、どの気候行動(緩和、適応、ロス&ダメージ)に配分するか、期間は何年間にするか、どのような監視体制を敷くか、などだ。

対立を激化させ決定額に直接影響した重要課題の1つは、この新たな目標を誰が費用負担するかという点だ。従来、途上国への気候資金拠出は先進国の義務とされてきた。現在の気候変動を起こした責任は圧倒的に先進国にあると認識されているからだ。しかし、先進国にリストアップされている国は1992年の条約採択当時から増えておらず、当然のことながらそれ以降、世界は変わっている。

行きつ戻りつの議論の末に採択された成果文書では、3000億ドルの目標達成を「先進国が主導」すること、途上国の資金拠出は引き続き任意とすること、拠出国に報告義務を課さないこととされた。つまり途上国の資金負担は現状と変わらない。

しかしこの背景には、COP29開幕序盤に出たある発表が関係している。中国が、途上国の気候変動対策のために2016年以降245億ドルの資金を投じたと初めて公言したのだ。中国はさらに、任意ベースではあるが気候資金の拠出を続ける意向を示した。気候変動枠組み下で「途上国」とされるほかの国も、多国間気候基金への資金援助をこれまでに確約している。コロンビア、カタール、南アフリカ、韓国などの国々だ。だが中国はCO2高排出国であり中・高所得国でもあるため、気候資金の負担を公約するように圧力が高まっている。任意から義務への転換が求められているのだ。

途上国間の連帯を示す文書に合意しながら、自らの途上国としての地位は変えない(気候資金の受給資格を失わない)ようにするのは、常に大変な作業だ。文書では、途上国が追加拠出を行ってもその開発や受給資格に影響しないことが確認された。結局これでは不十分とされ、目標への資金拠出に正式に合意した途上国はなかった。

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COP29会場での抗議行動。アゼルバイジャンの首都バクーにて。2024年11月20日撮影 

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所得と排出量の基準設定を

先進国は当初、3年間に及ぶ交渉過程の早い時期から、ドナーベースを拡大するよう求めていた。米国は、新たに中国を正式な拠出国にしたいという望みをあからさまにした。欧州連合(EU)は候補国の名指しは控えたものの、ドナーベースの拡大に賛成。拠出国が増えれば目標達成に向けてそれだけ金額が上積みできることは、言わずとも正当化できる。

スイスとカナダは、国民総所得とCO2排出量の一定基準値を超えた国は新たな気候資金目標に向け拠出を開始すべきだと、具体的な国名は挙げずに呼びかけた。今や途上国の多くは排出量が極めて多く、所得水準は気候資金拠出が義務づけられる先進国に匹敵するというのがその考え方だ。

こうした意見は、COP29の記者会見で、いくぶん無遠慮な言葉で表明された。

ある先進国の記者は、「途上国の中にはサッカーチームや高級ホテルチェーンを買い漁っている国もある。そういう国々にもっとお金を出すように我々は求められていると、国に帰ってどのように説明したらいいのか」と途上国グループの代表者に質問をぶつけた。

暗黙の想定として、途上国も協力していることを示せば、先進国は気候資金の増額を自国で説得しやすくなると考えられた。

米国の政治がもたらすもの

現状はどうだろうか。この交渉の論点から、途上国の一部は気候資金を拠出しているという事実が浮き彫りになった。長年続けている国もあれば断続的な国もあるが、先進国から途上国に一方通行でお金が流れているというイメージが変わると期待される。途上国同士の連帯感の高まりがいっそう認識されることにもなる。

また中国に対して、気候資金にどれだけ貢献し、また動員したのかを明言するよう初めて迫る機会でもあった。致命的なのは、米国がパリ協定や、ことによると気候変動枠組み条約からも離脱する可能性が高く、正式なドナーベースが近い将来実際に縮小する可能性があることだ。その見通しは、気候資金目標の大半が回ってくるかもしれないという思いが念頭にあったEUの交渉手法に重くのしかかったことは間違いない。また、中国や他の途上国が新たな気候資金目標へ正式に資金拠出することを見送ったのも、これが影響したのかもしれない。米国の国内政治は、今後も世界の気候変動対策の合意形成過程を左右すると思われる。

編集:Veronica DeVore、英語からの翻訳:宮岡晃洋、校正:宇田薫

この記事で述べられている見解はあくまで筆者のものであり、必ずしもSWI swissinfo.chの見解を反映するものではありません。

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