仕事のオートメーション化が雇用を奪うという懸念が叫ばれる中、スイス連邦政府はデジタル化を未来ととらえ、新たなサービスやテクノロジーの発展に対し、規制の枠を超えた自由を与えたいと考えている。スイス中部にある会社はファクトリーオートメーション化を進めているにもかかわらず、従業員の数が増えているという。
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ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)が、オプヴァルデン準州の家具製造会社アルプナッハノーム外部リンクがいかに人員を削減せず、製造工程の近代化を図っているかを紹介した。
インダストリー4.0とともに
コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)がスイス・ドイツ企業計約650社を対象に実施した2018年の調査によると、スイス企業のほぼ半数がアルプナッハノームと同様、第4次産業革命とも呼ばれる「インダストリー4.0」を取り入れていた。インダストリー4.0はドイツで始まった試みで、オートメーション化の推進のほか、製造技術におけるデータ交換、サイバーフィジカルシステム(CPS)、クラウド、人間のように働くコグニティブ(認識)コンピューティングの促進を目指している。
調査対象となったスイス企業は売上高の平均4.9%をインダストリー4.0のソリューションに投資しているほか、3分の1は2018年中に5%以上の投資増を計画している。ただ大半は、高い投資コストが足かせになり、熟練労働者の不足も開発の遅れにつながっていると答えた。
スイスの工業生産におけるデジタル化は、ベルンで8月末に開かれたメッセ「SINDEX外部リンク」で明らかになった。AR(拡張現実)の製造過程への組み込みを目指すシュナイダー・エレクトリック・スイス外部リンクのシモン・ライザー社長はSRFに「最近では、具体的にバイヤーがどのような利益を得られるのかに焦点を当てている。初期の誇大広告はもう終わりだ」と語った。一方、関連企業でつくる団体スイステクノロジーネットワーク外部リンクのレネ・ブルガー代表は、雇用とオートメーションは二律背反の関係があると認める。しかし「オートメーションなしでは競争力を失い、更なる雇用削減につながりかねない」と話す。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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人間の仕事を奪うロボット 課税対象になるべきか?
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「死」と「税金」。これらの二つが、人間が免れることのできないものだとすれば、私たちの社会にますます浸透し、従来の人間の仕事を奪いつつあるロボットにも、人間と同じように税金が課されるべきだろうか?
「労働力としてのロボットにも課税する」。これがジュネーブ大学教授で税金専門の弁護士でもあるグザビエ・オベルソン氏の展開する議論だ。特に製造業やサービス産業で、今後もオートメーション化が進み、人間の仕事がますますロボットに奪われることによって、世界中で失業者が増え、労働者の払う税金や社会保険料の減収が予想されるからだという。
オベルソン氏は、ロボットが請け負う労働に課税することが、雇用喪失による税金や保険料の減収を相殺する一助になると考えており、ロボットを代表する「法人組織」を作ることでそれが可能になると考えている。「ロボット税の導入には世界的なアプローチが必要だ。
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スイス、技術革新に「強く反発」
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「グローバル化、AI(人工知能)、仕事やコミュニティのオートメーション化への反発は、今後テクノロジーの発達につれてさらに大きくなる。社会が安定し秩序だっているスイスでは、その反発は特に大きくなるだろう」。ジュネーブにある国際・開発研究大学院の国際経済学教授、リチャード・ボールドウィン氏はこう予測する。
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スイスの製造業をロボットが救う?
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ロボットは産業の空洞化を食い止めるだけでなく、進んでしまった時計の針を戻してくれるかもしれない。スイスの製造業で、ロボットを使って生産ラインをオートメーション(自動化)する動きが加速している。高い人件費を抑え、生産拠点の海外流出を阻止する期待が背景にある。
最近のフラン高で競争力の低下を懸念したスイスの企業は、軒並みコストの安い海外に製造拠点を移した。契機は2015年1月、スイス国立銀行(中銀)が対ユーロ上限を撤廃し、ユーロが暴落したことにある。スイスの輸出業は打撃を受け、特に欧州市場は著しく影響を受けた。
生産拠点の海外流出を食い止め、国内企業が生き残りを図る頼みの綱は、最新のイノベーション技術だ。例えば人間と協働するロボット、生産ラインの欠陥を見つけるセンサー、全稼働部門を統括する高度なソフトウェアなど、それらが建設、組立から物流、発注に至るあらゆる部門で活躍する。
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