スイス人にタンタル違法取引疑惑、コンゴ内戦を資金援助とNGO
コンゴ民主共和国では外国の支援を受ける多数の武装勢力が1998年以来内戦を続けている。このほど、スイス人経営の貿易会社による鉱物取引が、ルワンダの支援を受ける武装勢力の資金となっていると非政府組織(NGO)から非難された。
資源の豊富な中部アフリカ諸国では、産地をおさえる武装勢力が資源の売り上げ金を内戦継続の資金にしている。最も有名な例は「紛争ダイヤ」と呼ばれるアンゴラとシエラレオネ産のダイヤモンドだ。ベルギー・アントワープのNGO「インターナショナル・ピース・インフォメーション・サービス」(IPIS)がブリュッセルで発表した約30のNGOによるリポートは、スイス人クリス・フーバー氏が携帯電話などのコンデンサーに使用されるコロンボタンタル(coltan)という鉱物の取引でルワンダ軍との癒着があると指摘した。同リポートによると、コンゴ産のcoltanなどの資源は、ルワンダなど外国勢力によって国外に持ち出され、売り上げ金は各国が支援する武装組織の闘争資金とされる。NGOは、ソニーやノキアなどのメーカーにコンゴなど紛争地域から輸入されたcoltanの使用を禁止するよう呼び掛けている。
希少鉱物タンタル(coltan)を精製すると、きわめて耐酸性が強く高温でも強度が強いパウダーになる。金属表面にタンタルで酸化皮膜を形成し誘電体とすることにより、同一静電容量で最も小さなコンデンサーを作成できる。そのため、ソニーやノキアなど携帯電話やラップトップのメーカーでタンタルコンデンサーの需要が高まり、coltan価格も急騰、現在では1kgあたり約400ドルとなっている。
IPISによると、問題のスイス人フーバー氏は、コンゴ東部の反政府武装勢力を支援するルワンダの内戦資金援助に需要な役割を果たしているという。フーバー氏のオフショアカンパニー、FinminingとRaremetはルワンダ軍の支配下にあるルワンダ・メタル社からcoltanを購入しているとし、IPISはスイス政府と議会にフーバー氏の取引の詳細を調査するよう要請している。リポート執筆者の1人、IPISのイェロン・クヴェリエ氏は、97年からcoltan取引を行っているフーバー氏はルワンダ軍の最も重要な取引相手の1人であり、スイス当局には是非とも迅速な行動をお願いしたいとswissinfoに語った。加えて、フーバー氏が国際貿易規制に違反していないことを証明できな場合は、スイス当局はフーバー氏を逮捕するべきだと述べた。
コンゴ東部産のcoltan売買に関わる問題は、昨年10月の連邦議会で取り上げられた。その際パスカル・クシュパン経済相は、連邦政府が国連の専門委員会と連携しながら調査にあたっていると答えた。紛争鉱物取引に関する国連のリポートが発表された2000年6月、スイス航空とベルキー・サベナ航空はcoltanの輸出元である東アフリカからの路線を停止した。国連リポートによると、鉱物資源のほとんどの違法取引は現地の企業または個人によるものだが、外国の企業が関わって入る場合もあるとし、国連は制裁を要請している。同リポートは、コンゴ民主共和国の無尽蔵の鉱物資源と暴利をむさぼる不徳の者達が、国の政情不安定の主要因だとしている。
coltanはコンゴで政治問題だけでなく、環境問題も引き起こしている。絶滅寸前のグレーゴリラの保護地区に指定されているKahuzi-Biega国立公園が、coltanの一大産地にあたっている。そのため同公園では10、000人以上がcoltan採掘に従事しているが、労働者達がグレーゴリラを食用にしたため、近年グレーゴリラの生息数は、8000匹から1000匹に激減した。
スイス対アフリカ商工会議所のウーゴ・サルヴィスバーグ氏によると、このようなコンゴ情勢にも関わらずスイスはコンゴとの経済的な結びつきを強化しようとしており、カビラ新大統領との関係を構築するために尽力中だという。サルヴィスバーグ氏によると、スイスはこの地域にプレゼンスを築きあげることが重要であり、中小企業の多くがコンゴとの取引に感心を寄せている。
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