スイス時計の偽物対策 政府が本腰へ
スイス税関局は11日、西部フリブール州でスイス製の時計を模倣した偽物約10万点を押収した。
時計業界は、こうした偽物は年々増える一方で、被害総額も年間8億フラン(約714億円)に上ると訴える。偽物の流通が加速する背景には、インターネットの進展で、ネット競売にもスイス製と見た目が変わらない偽物の時計が多く出回るようになったという事情がある。
当局による今回の摘発は規模が大きく、国内の偽物拡散防止に向けて政府が本腰を入れ始めたと言えそうだ。だが、中国をはじめとする新興途上国では、当局の摘発を受けても次から次へと出てくるのが現状で、国外も含めると、偽物退治は簡単ではなさそうだ。
加速する偽物流通
スイスで生産される時計の約9割は輸出向けといわれる。スイス時計協会によると、昨年の輸出総額は前年比4.4%減の102億フラン(約8,924億円)だった。こうした不況に加えて、偽物の流通が業界に追い討ちをかける。
同協会のジョン・ダニエル・パシュ会長は、偽物による被害総額が「年間8億フランになる」と試算した上で、「模倣問題は業界が直面している大きな悩みだ」と話す。
スイスの貴金属管理局によると、毎年3,000万から4,000万個のブランド時計の偽物が東南アジアや中国、トルコやイタリアなどの地中海沿岸地域で生産されるという。その膨大な数もさることながら、摘発するのも容易ではない、と同局のダニエル・モニー氏は話す。
「中国やタイなどでは当局も製造元の摘発に動いてはいるが、工場をいくら閉鎖させても、次から次へと新しく別の工場ができて、完全な取り締まりはほとんど不可能」と同氏は説明する。
また、ネット販売ではブランド時計の偽物流通はさらに加速している、とモニー氏は指摘する。「インターネットで本を購入するのは問題ないとしても、時計や貴金属を購入するのは勧められない。ネット競売のイーベイ社で競売される商品ですら、多くの商品は偽物だから気をつけた方がいい」と同氏は話す。
スイス国際放送、外電 安達聡子(あだちさとこ)
スイス時計協会によると、2003年のスイスの時計生産量は、前年比8.4%減の2,590万個。
このうち約9割が輸出向けで、輸出総額は102億フラン(約8,924億円)だった。
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